緑内障の約8割を占める開放隅角緑内障は、複数の点眼薬を使うことが多い。煩わしさが原因で治療がうまくいかないこともあるが、配合剤の利用で効果が得やすくなった。一方、閉塞隅角緑内障には、レーザー治療が普及している。
緑内障は、眼圧が高いことによって視神経が障害され、徐々に視野が欠けていく病気だ。
「発症は中高年から増え始め、高齢になるほど多くなります。日本緑内障学会の大規模調査では、40歳以上の20人に1人、60歳以上では10人に1人がこの病気を持っていました」
と、岐阜大学病院眼科科長で日本緑内障学会理事長の山本哲也医師は言う。
眼圧とは、眼球の内側から外側に向かってかかっている圧力で、房水という液体によって調節されている。房水は毛様体(もうようたい)で作られ、水晶体と虹彩(こうさい)の間を通って目の前方を流れ、角膜と虹彩の間の「隅角(ぐうかく)」から排出される。
房水の産生と排出のバランスがとれていれば、眼圧は一定に保たれる。だが、隅角が詰まったり完全に塞がれたりすると房水がたまって眼圧が上昇する。
緑内障の大半は、原因を特定できない原発緑内障だ。これには、隅角が開いている「開放隅角緑内障」と、隅角が閉じている「閉塞隅角緑内障」がある。前者は近視の人に多く、後者は逆に、若いころから視力が良かった人に多い。治療法も異なる。
開放隅角緑内障は、緑内障全体の約8割を占める。これはさらに、眼圧が高い(21mmHg以上)タイプと、眼圧が正常値(10~20mmHg)の「正常眼圧緑内障」に分かれる。前出の調査では、開放隅角緑内障の約9割は正常眼圧緑内障だった。
「日本人は視神経の内部構造が脆弱な人が多く、眼圧が正常値でも障害されやすい。そのため、正常眼圧緑内障でも眼圧を下げる治療をします」(山本医師)
では、どこまで下げるか。
標準治療では、治療前の眼圧から20~30%下げることを目標にする。多くの場合、それで視神経の破壊や視野の欠損などの進行が抑えられたり遅くなったりする。治療の目的は見え方の改善ではなく、10年後、20年後の視野や視力を守ることにあるのだ。