奥井医師による調査結果では、月間200キロ以上走る人たちの中には循環器系異常(虚血性心疾患や不整脈)が見られた人もいた。これはどういうことか。
「心臓の冠動脈と男性器の血管は、大きさや形、性能がすごく似ているんです。だから男性器の血管が詰まり始めたら、心筋梗塞(こうそく)の前触れとも言われています」(奥井医師)
マラソン中に突然死してしまう例もある昨今、奥井医師はドクターランナーとしてマラソン大会の医療支援もしている。
「月間200キロを超えるランナーはたくさんいます。市民マラソンランナーは仕事のように走ってしまう傾向があって、異常に練習してしまうんです。特に40代後半の人は自分の体がまだ若いと思っていて、タイムが伸びなくなってきたことを練習不足が理由だと思ってしまう。休息を取らなきゃ、とはならないんですね。過度な練習でランニング距離を増やしてしまう人は非常に多いです」
月間200キロのランニングは、毎日6~7キロ走ると到達する数字だ。テストステロン値が低下してしまう前に“走りすぎ”に気づきたいところだが、何か目安はあるのだろうか。
「早朝勃起が弱まったなと感じたら、それは健康の危険信号。EDになるかもしれないサインです。走りすぎかなと振り返ってみてほしい」
早朝勃起は、寝ている間に尿がたまる刺激により起こる。しかし、テストステロン値が低く、血流が改善されていない人は勃起しない。早朝勃起は血流のバロメーターになる。
もし早朝勃起がすでに弱まっていると感じても、休息を取れば、テストステロン値は戻るそうだ。毎月フルマラソンを走るような人なら、一度走ったら2カ月はリカバリー時間を設ける、3週間しっかり練習したら1週間は休むなど、メリハリをつけることが肝要、と奥井医師は言う。
「性機能は人間の一生とパラレルな関係です。自分の体の変化を注意深く観察して、楽しく走ってほしいですね」
※週刊朝日 2017年5月19日号