大手人材会社インテリジェンスの転職サービス「DODA(デューダ)」がまとめた2月の概況によると、サービス登録者に対して中途採用の求人が何件あるかを示す「転職求人倍率」は2.38倍、求人数は前月比2.5%増で最高を更新と「転職バブル」とも言われている。希望の企業や仕事に移る人が目立つ一方で、年齢の壁もあり、うまくいかない人もいる。「勝ち組」と「負け組」がはっきり分かれている状況だ。
転職バブルといっても、誰もが成功するわけではない。
転職先の仕事にやりがいを持てず、前の会社のほうが良かったと後悔する人。もっといい企業があるはずだと何度も転職を繰り返す人もいる。特に中高年の仕事探しはハードルが高い。実態は想像以上に厳しいと指摘されている。
「誰でも転職できる」といった安易なイメージに警鐘を鳴らすのは、人材会社「ルーセントドアーズ」の黒田真行社長(52)だ。リクナビNEXT編集長などを経て、14年に独立。35歳以上の転職や採用を支援する会社を立ち上げた。転職希望の登録者は累計で約3万人にのぼる。30年近く市場を見続け、相談に応じてきた。
「求人広告に年齢が書かれていなくても、実際は35歳までをねらったものが多い。おおざっぱなイメージだが、求人数は36歳になると半減し、さらに40歳、45歳と5歳刻みでほぼ半減していく。求職活動する人は年代によってあまり変わらないので、高齢になるほど残された椅子を巡る競争が激しくなる」
今は売り手市場だが、企業側は優秀な人材を見極めようとしている。判断するときに考慮されるのが、それまでの転職回数だ。
「1~2回ならいいが3回目を超えると、なぜ繰り返したかの合理的な説明を求められる。ころころ会社を変える人だと思われると、採用されにくい。若いうちは転職しやすいので数年で会社を渡り歩くこともできる。ただ、回数を刻むと、後から選択肢を狭める恐れがある。若いうちから、転職はリスクもあると理解したうえで決断すべきだ。転職しやすい状況だからといって、誰でも転職すればよいわけではない」
重要なのは動機や理由をはっきりさせることだ。「給料が高くなりそうだ」といったイメージだけで判断するのはよくない。
「長期的に自分のキャリアを考え、なぜいま転職すべきかを理解する必要がある。人間関係を挙げる人も多いが、大企業にいるならば、上司と合わないぐらいで決めないほうがいい。転職では大手から中小に移ることが多い。小さい会社で上司と合わないほうがつらい。目先の嫌なことを避けるためだと、結果的に何度も転職を繰り返してしまう」