2015年4月、約9千人の犠牲者を出したネパール大地震。震源地となった小さな村のドキュメンタリー映画が日本で共感を呼んでいる。ナレーションを担当した倍賞千恵子さんと、石川梵監督が「復興と希望」について語り合った。
* * *
石川梵(以下、石):最初にお会いしたのは2011年の秋ですよね。山田洋次監督に紹介していただいた。
倍賞千恵子(以下、倍):山田さんから梵ちゃんが震災後に撮った写真集がすごくいいって、教えてもらったの。
石:お目にかかったのは東北でした。倍賞さんは支援活動にいらしてた。
倍:そうそう。あのとき私はとにかく「できることをやろう!」と思って、被災地に卓上コンロやおむつを送ったり、「男はつらいよ」の上映会をしながら支援物資を配ったり。そうしたら去年、梵ちゃんからこの映画のDVDが送られてきて……。
石:何も言わずに送っちゃったんです。
倍:見たらスーッと引き込まれちゃった。なんといってもね、「人間の生きる美しさ」みたいなものをすごく感じたんです。私で協力できるなら、とナレーションを引き受けたの。
石:ありがとうございます。
倍:舞台となるラプラック村はすごい急斜面にあって、震災後は家もみんなペシャンコでひどいことになっているんだけれど、村の人たちがいつも笑ってるのね。見ていて気持ちがよかったし、生きようとする人間の力ってすごいなあって。この村は本当はもう人が住むことができないんでしょ?
石:地盤が崩壊する危険があるので、レッドゾーン指定なんです。村から歩いて2時間ほどの高台にキャンプ地があって、政府はそこを新しい村にしようとしています。
倍:それでも「私たちはここに住み続けたい」って村を動かないおじいちゃんやおばあちゃんもいるじゃない? 見ながら「東北の人たちの思いとまったく同じだなあ」と思った。それに主人公の男の子アシュバドルがいいのよね。妹と一緒に地面で寝ちゃったり、牛に頭をなめられて「頭を洗っているんだよ」って言ったり。すごいよね。
石:僕もいっぺんで魅了されました。「こんなに目が輝いている、すてきな子に会ったことがない!」と。
倍:本当に自然そのままに「生きてる!」って感じ。