全米で繰り広げられる反トランプデモ (c)朝日新聞社
全米で繰り広げられる反トランプデモ (c)朝日新聞社
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 トランプ大統領の暴言が止まらない。「オバマが選挙戦中にトランプタワーを盗聴した」(3月4日)と爆弾発言をしたが、その証拠は示されていない。ティラーソン国務長官が来日するも、米国で激しさを増す「トランプ弾劾」の動きを追った。ジャーナリストの矢部武氏が取材した。

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 注目されているのは、35人の精神科医などが連名でニューヨーク・タイムズ紙に送った投書だ。

〈トランプ氏の言動が示す重大な精神不安定性から、私たちは彼が大統領職を安全に務めるのは不可能だと信じる〉(2月13日付)と警告したのだ。

「偏執病のナルシスト」

 米国精神医学会(APA)は「精神科医が自ら診察していない公的人物の精神状態について意見を述べるのは非倫理的だ」として禁じる規定を設けている。しかし、この35人は「黙っていることはあまりに危険すぎる」と考え、あえて規定を破って発言したのだ。

 それでは、トランプ氏が抱えるとされる「自己愛性パーソナリティー障害」(NPD)とはどういうものか。APAによれば、多くの人に自己愛性の傾向はあるが、そのうち「NPD」と診断される人は1%程度だという。NPDの診断基準は、「自分を過大評価し、実績や才能を誇張する。過度の称賛を求め、対人関係で相手を不当に利用する。共感性に欠け、傲慢で横柄な態度をとる」など9項目からなり、五つ以上があてはまると相当するという。

 臨床心理博士として約25年の診療経験を持つリン・メイヤー医師は、「ほとんどの項目がトランプ氏にあてはまる」と話す。たとえば、トランプ氏が「自分は賢いので、毎日の情報機関からのブリーフィングは必要ない」と話したことについて、メイヤー医師は「“頭が良くて何でも知っている”という誇大妄想からきていると思います。自己を過大評価し、実際にない能力があるように思い込んでいて、国や国民を危険にさらす可能性があります」と分析する。さらに怖いのは、自己制御が利かない衝動性と精神不安定性を持つ人物が核のボタンを握っていることだという。

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