音尾琢真/1976年生まれ。北海道出身。96年、北海学園大学演劇研究会出身の森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋と演劇ユニット「TEAM NACS」を旗揚げ。映画「たたら侍」が5月20日、「関ケ原」が8月26日に公開予定(ヘアメイク/白石義人[ima.]、スタイリスト/村留利弘[Yolken]、撮影/工藤隆太郎)
音尾琢真/1976年生まれ。北海道出身。96年、北海学園大学演劇研究会出身の森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋と演劇ユニット「TEAM NACS」を旗揚げ。映画「たたら侍」が5月20日、「関ケ原」が8月26日に公開予定(ヘアメイク/白石義人[ima.]、スタイリスト/村留利弘[Yolken]、撮影/工藤隆太郎)
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 新しい何かを手に入れるために、人のアイデアを素直に取り込むこと。同時に、自分の中にある要らないものを捨てること。音尾琢真が舞台に取り組むときは、毎回、そんな修業のような作業の繰り返しになるという。

「自分の中にない経験や感情が台本に書かれていて、“わからない”と思うとついくじけそうになります。でも、“わからない”から“できない”わけではない。僕は、わからないことはどんどん演出家の方に聞きますし、そこでいただいたアドバイスを、さも自分が考えたかのように演じるのは、割と得意かもしれない(笑)」

 大学の演劇研究会から生まれた演劇ユニット「TEAM NACS」では最年少。10年ほど前に活動の幅を広げてからは、映像以外にも、海外の演出家の作品や、有名作家の翻訳劇など、話題の舞台に数多く出演している。今回挑戦するのは、スウェーデンの作家ストリンドベリの「死の舞踏」だ。もう一作の「令嬢ジュリー」と同時期の上演で、シアターコクーン内に、二つの小劇場が設営されることも注目を集めている。

「稽古をしながらも、自分の才能と技量のなさを痛感する毎日ですが(苦笑)、こういうハードルが高い舞台のオファーが来るようになった喜びを思えば、大概のことは乗り越えられる気がします」

 父は警察官。子供の頃は、「将来はお巡りさんになる!」と信じて疑わなかったが、思春期を経て、そんな素直さはすっかり失われてしまった。進路について、初めて真剣に考えたのは高校3年生のときだ。

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