右足首痛のためWBCだけでなく、開幕戦の出場も危うくなった日本ハム・大谷翔平。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、「ベター」ではなく「ベスト」な選択をすべきだと助言する。

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 日本ハムの大谷翔平が右足首痛のためにWBC出場を断念。3月31日の開幕戦の出場も微妙な状況となっている。本人は「極力やらないのがベスト。シーズン前まではやらない方向でいる」と話しており、早期の手術は行わず状態を見極めていくとみられる。

 病院の診断では「右足首の三角骨による痛み」だったという。投手によくみられる症状で、日米で活躍した石井一久も2010年オフに左足三角骨を削る手術を受けた。一般的に、投球がまったくできないということはないようだが、大谷の投球フォームを考えると、大事な箇所だと感じている。

 投手にとっての軸足、つまり大谷にとっての右足は、フィニッシュへと体重移動をしていく際に最後にマウンドを蹴る。腕、肩、腰の回転を助け、体重移動を行う部分である。左足を前に出した後、加えて右足の蹴りがないと、その場で体を回転させるしかない。蹴りの強さと柔軟性は最後の力の伝達には不可欠なものだといえる。

 たとえば、西武時代の松坂大輔はどちらかというと「押し出す」投球フォームだった。つまり、右足でプレートを蹴るというよりは、右足はマウンドに引きずるように出ていって、腕を振り切ったときに右足が跳ね上がるような形だった。だが、大谷は違う。押し出すのではなく、腕、肩、腰の回転力で爆発的なパワーを生むタイプで、しかも下半身からの連動で投げる。右足の蹴りがなくなれば、球威、制球などいろんな面で感覚の違いが生まれる可能性がある。

 手術を受けた場合は2~3カ月は離脱することになるだろう。彼の場合は打者としても、チームの中で大きなウェートを占める。野手のほうが負担は少ないだろうが、仮に強度を上げていっても問題がない場合にどういった判断をするのか。投球練習もその先に行うことになるだろうが、8~9割の力を入れたときに痛みが出なくても感覚のズレを感じることだってある。栗山監督は本当にいろいろなプランを考えているし、コーチ、スタッフ、本人とも納得がいくまで話し合って決断するだろうが、方針決定には頭を悩ませているだろうな。

 
 昨年のように投打のこれだけハイレベルな実力を見てしまうと、使う側の悩みは何倍にも増える。コンディションが万全でない状態だと、本人も練習を重ねられない。二刀流というものが、いかに状態に左右されるものなのか、改めて感じる。だからといって、どちらかに専念せよというわけではない。大谷自身もチームのための最善策を模索するだろうが「ベター」ではなく「ベスト」な選択をすべきだ。まだ22歳だし将来がある。

 23日からは侍ジャパンの宮崎合宿もスタートする。中田(日本ハム)が左手首を少し痛めている。投手陣もこれから投球練習の強度を上げれば、WBC公式球の扱いで普段とは違った箇所に張りを感じることも出てくる。それが重大な故障につながらないことを祈るばかりだ。

 首脳陣は選手のコンディションが整わなければ、起用もできない。今大会は予備投手制度が導入され、9投手が予備登録されたが、大会に入ってからアクシデントが出ても、WBC球で練習していない代替投手に負担はかけられない。故障だけはしてはいけない。

週刊朝日  2017年3月3日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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