「日本へは5、6回行ったな。秋葉原で食べたアイス、セブン-イレブンで買ったポテトチップ、おいしかった。それから上野で食べた焼き鳥だ。ビールが冷えているのがいい。赤坂では何度もカラオケに連れていってもらったな」

 温泉と日本酒が好きで、こんな夢も語った。

「温泉が最高だ。北朝鮮で日本式の温泉旅館でもやってみたい。旅館のオヤジになる。だが、酒ばかり飲んで商売にならないかな」

 日本を気に入っていたようで、フェイスブックにも、死の直前まで、上海、シンガポールなどで日本人が経営する料理店やガールズバーのファンページに「いいね!」を押していた。

 01年に日本へ不法入国しようとしたことについても記者にこう語った。

「入国拒否を受けて帰国したとき、父に叱られた。あの件で後継候補から外れたと言われるが、私はもともと政治家に興味がない。だから失脚という言葉は適切ではない」

 マカオにはよく出没し、「『金龍娯楽場』という風俗ビルみたいなホテルがあって、そこのロビーで何回か見た。『リスボア・ホテル』でも見かけた」(在住の日本人)

 その後も本誌は正男氏とマカオで会ったが、あるとき、日本酒を所望され、3本持参したことがある。ホテル内の日本料理店の一室で落ち合い、日本酒で乾杯すると「おいしい」と日本語で笑った正男氏。杯を重ねると日本や海外旅行のことに話が集中した。

「USJのアトラクション、リニューアルするのか?」「パリでもディズニーランドに行こうとして、ダメだった」

 記者の日本のパスポートを見せてほしいと言うので、手渡すと、おどけながら、パスポートに頬ずりし、こう話した。

「これがほしい。世界、どこにでも行ける。うらやましい」

 思い切って北朝鮮の政治状況について尋ねてみた。

「自分が後継者になる気はないのか?」

「政治にも興味がない。私の出番はまずない。その意思もない」

「国家が危機に陥っても?」

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