──これまであなたは社会問題や政治に口を出すことなく、ギターを弾くことに専念してきましたが、『ラウド・ヘイラー』にはネット時代やリアリティテレビなどに対するメッセージ・ソングが収録されています。
それもロージーやカーメンと組んだことが大きいね。彼女たちは俺の家に来て、まる3日かけてアイデアをぶつけ合ったんだ。歌詞の内容についても、俺の考えを話した。それを歌詞にするのはロージーの得意分野だった。彼女たちのアイデアも込めながら完成させていったよ。
──ドナルド・トランプが大統領となりましたが、アルバムの発売を遅らせて彼を題材にすることも出来たのでは?
いや、それよりもトランプをネタにしてもう一枚アルバムを作れるよ。『ラウド・ヘイラー:ザ・トランプ・イヤーズ』なんてどうだい?(笑)他にも題材になる社会問題は幾つもある。ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)だってそうだ。あの呼び名は嫌いで、日常生活で使うことはないけどね。だって朝食のシリアルみたいな名前だろ? まあ、人々が社会で起こっていることについて公に話すようになったのは良い風潮だと思っているし、歓迎するよ。
──2016年は音楽不況といわれましたが、『ラウド・ヘイラー』が世界的に好セールスを記録、7万4千円の豪華写真集『BECK 01』も発売されるなど、あなたにとっては良い一年だったのではないですか?
悪くはなかったけど、活動のかなりの割合をツアーが占めていたよ。アメリカとヨーロッパを回ったし、楽だったわけじゃない。それに『BECK 01』の値段を決めたのは俺じゃないよ。印刷や製本も立派だし、原価も相当かかっているんじゃないかな。
──16年には多くのミュージシャンが亡くなっています。1月10日にはデヴィッド・ボウイが亡くなりましたが、彼と最後に会ったのは10年でしたか?
そうだよ。それが最後になった。
──1973年7月3日、ボウイのロンドンでのライヴは撮影され、映画『ジギー・スターダスト』として公開されましたが、あなたがゲスト参加した「ジーン・ジニー」「ラヴ・ミー・ドゥ」「ラウンド・アンド・ラウンド」を映画に収録することにNGを出したのはなぜですか?