



安倍政権を支える二枚看板、二階俊博自民党幹事長と菅義偉官房長官。不仲説も取りざたされる2人の大物が本誌で初対談した。ハチャメチャなトランプ米国大統領にはどのように対応していくのか。作家の大下英治氏が切り込んだ。
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大下:トランプ米国大統領が誕生して、安倍総理の訪米が予定されています。難しい交渉になるでしょうね。
菅:なかなか、手ごわそうです(笑)。いろんな情報を収集していますが、メディアで言われているような単純な考えの人ではなさそうです。去年暮れにトランプ氏に最も近いと言われる人物が来日したので1時間ほど会ったのです。彼が言うには(トランプ氏は)結果が出ることを、まず先にやるんだということです。
大下:政治家みたいに長い布石は打たないんですね。
菅:まず成果が出ることを先にやり、それを国民に見せる。そして既存メディアは信用していない。だからツイッターを使うんです。ツイートする時は戦略的、戦術的に考えた上でツイートしていると言うんですよ。例えば、選挙中にツイッターで「メキシコ国境に壁を造る」と打っていましたね。これは、メキシコとの関係では、不法移民問題が蔓延し、麻薬の問題もあり、何とかして欲しいと思っている人が多数いた。それに対し、トランプ陣営として何を有権者に示すのがいいかと考え、「壁を造る」と発信した。これで、有権者は、トランプ候補は自分たちの抱える問題をよくわかっていると思うのです。自分の意思がツイッターなら伝わると思っているようですね。
大下:確かに早く伝わって、色がつかないし。
菅:大統領選挙の最中に、マイケル・フリンという今の大統領補佐官(国家安全保障担当)と会ったんです。その時、「やはり日米同盟というのは一番重要だ。トランプ政権になっても全く変わらない。心配しないで欲しい」と力強く言ってくれた。フリン氏が大統領補佐官就任直後に電話会談した谷内正太郎国家安全保障局長から先日自分に電話がかかってきました。「24時間、365日、いつでもいいから何かあったら、連絡して欲しい」とフリン大統領補佐官が言ってくれたというのです。また、安倍総理は、トランプ氏が大統領選勝利後から就任までの間に会談した、ただ一人の外国首脳です。会談は非常にいい雰囲気だったと総理が言ってました。お互いに好印象で信頼関係を構築する良い機会になったと思います。
大下:トランプ大統領はどういう人なんですか?
菅:大統領選勝利直後の最初の総理とトランプさんとの電話会談に私は同席したのですが、トランプさんは陽気でざっくばらんな方だという印象を受けました。こちらも、たまたま、ニューヨークの日本人弁護士でトランプ陣営と近い方からアドバイスを頂いたりしました。1月28日の夜には、総理は大統領就任後のトランプ大統領と電話会談を行い、私も同席しましたが、今回も非常に話が弾み、2月10日に安倍総理が訪米して日米首脳会談を行うことで合意しました。トランプ大統領が就任後に行う首脳会談としては、英国などに続き、極めて早いタイミングで行われることになりそうです。日米同盟の絆が揺るぎないことを改めて世界に示す絶好の機会になると思います。
大下:でも、とんでもない人が出てきたなと思いませんでしたか。
菅:(意外だったのは)1月27日に行われたトランプ大統領とイギリスのメイ首相との会談は非常に手堅いもので米国と英国で好評だったようです。手ごわいのは経済分野ではないですか。安保分野などの政策は閣僚に任せるのではないかと分析する人が少なくありません。メイ首相との会談後の共同記者会見で、同首相が当てた英国の記者がトランプ大統領が困るような質問を非常に辛辣な表現を使ってしたところ、トランプ大統領は、おどけるような素振りでメイ首相の顔を見ながら「この質問はメイ首相が選んだのですか?」と切り返して会見場は大笑いになったそうです。また、記者からマティス国防長官の発言とトランプ大統領の発言の違いについて聞かれて、トランプ大統領は「私は(彼の意見に)賛成はしないが、私は権限を国防長官に与えているから、私よりも国防長官の意見が優越する」と切り返し、部下の意見を尊重する度量を見せたそうですよ。(構成 本誌・村上新太郎、上田耕司)
※週刊朝日 2017年2月17日号より抜粋

