
初登場の大阪ライヴを含む73年集大成盤
1973 (One And One)
マイルスの73年にテーマを絞った企画盤。ただし既発音源をそのまま流用しただけの安直なものではなく、これがじつにありがたく、よくできている。まず冒頭からの4曲は、大阪フェスティヴァル・ホールにおけるライヴで、まったくの初登場。音質、バランスともに難ありだが、これ以上のテープが現存していないことを考えると、やはり出す意義はあると強く激しく思う。《ターンアラウンドフレーズ》から《ジンバブエ》まではファースト、《イフェ》はセカンド・セットの演奏。しかしどうしてこれだけの音源しか録音されていなかったのだろう。まだあるの?(って誰に聞いてんだ)
5・6曲目と13・14曲もうれしい収録。というのもこれら4曲、直近ではエレクトリック・ブルー盤に収録されていたが、そもそもプレス枚数が少なく、結果的に廃盤状態になっていた。よって探していたブート初心者も多く、これによって待望の復刻となる。音質もややヴァージョンアップされ、タイトにまとまっているように聞こえる。カリル・バラクリシュナ(エレクトリック・シタール)、ロニー・リストン・スミス(キーボード)が参加のマイルス・ノネット、この音源この4曲は絶対にはずせない。個人的には公式発売をもっとも強く望みたいライヴ音源ではあります。
7~12曲目まではニューヨーク『ヴィレッジ・イースト』(かつての名称は『フィルモア・イースト』)におけるライヴ。こちらは現在でもメガディスク盤『ヴィレッジ・イースト1973』として入手できるが、おそらく別ソースか、音質・バランスともに向上しているように思う。デイヴ・リーブマン参加直後、しかも《プレリュード》の初期ヴァージョンが聴けるなど魅力は尽きない。
というわけで駆け足でみてきたが、記録性という点では大阪ライヴの4曲に軍配が上がり、その記録性もふまえ「ウワ~ッ」とのけぞるような興奮を覚えるのはロニー・リストン・スミスとカリル・バラクリシュナ参加の4曲というのが総合的評価。この容易に聴くことができなかった4曲をヴァージョンアップさせた上で収録した点にこそ、このブツの真骨頂がある。ごくごく短期間で終わったエレクトリック・マイルス・ノネットの雄姿、とても全貌と呼べるほど十分なものではないが、その片鱗だけでもとくと味わっていただきたい。『オン・ザ・コーナー』と『アガルタ』『パンゲア』を結ぶ線の途切れていた部分が、まさしくこのノネットによる演奏なのです。
【収録曲一覧】
1 Turnaroundphrase
2 Tune In 5
3 Zimbabwe
4 Ife (incomplete)
5 Ife
6 Zimbabwe (incomplete)
7 Rated X (incomplete)
8 Untitled Tune
9 Honky Tonk
10 Prelude
11 Ife
12 Black Satin (incomplete)
13 Tune In 5 (incomplete)
14 Zimbabwe (incomplete)
(2 cd)
Miles Davis (tp, org) Dave Liebman (ss, ts, fl) Pete Cosey (elg, per-except 7-12) Reggie Lucas (elg) Khalil Balakrishna (el-sitar-except 1-4) Lonnie Liston Smith (key-5,6,13,14) Cedric Lawson (key, synth-7-12) Michael Henderson (elb) Al Foster (ds) Mtume (per) Badal Roy (tabla-except 1-4)
7-12:1973/1/13 (NY)
5,6:1973/4/5 (Seattle)
13,14:1973/5/2 (LA)
1-4:1974/6/30 (Osaka)