その後、天照大神、大国主命、瓊々杵命(ににぎのみこと)など国造りに関わった神を崇めるようになり、やがて乱世を制した天下人を神として祀(まつ)るようになっていく。

 つまり神社に行くと、全身にそのパワーを授かるため成功するというわけだ。

「特に武将は戦の前に神社に参拝に行き戦勝祈願をしましたし、中には神仏像を戦場に持っていく武将もいました。信玄は『戦は魔法にて候』と言っています。それくらい神を頼りにしていたとも言えますね」(小和田さん)

 上杉謙信は毘沙門天を篤く崇拝し、戦場へ毘沙門天像を持っていくほどであった。さらに謙信自らが毘沙門天の生まれ変わりだとも称していた。

 大河ドラマ「真田丸」で真田昌幸や信繁(幸村)が屋敷にいるとき、床の間に「白山大権現」と書かれた掛け軸が掲げられているのを見た人も多いだろう。

「真田丸」の風俗考証を担当した立正大学教授の佐多芳彦さんがこう解説する。

「あれは現在、山家(やまが)神社と呼ばれる白山社を崇めていたことを表すものです。真田家が代々篤く信仰してきた神社のことです」

 桶狭間の戦いで勝利した信長であったが、比叡山延暦寺を焼き討ちした後、本能寺で討たれてしまった。これは神仏を畏(おそ)れなかった報いとも言われた。

 一方、篤く神仏を崇め庇護した家康は260年におよぶ徳川の世を築くことに成功した。

「やはり神を味方につけないと、成功は難しいのでしょうね。2016年の流行語大賞を受賞した“神ってる”でしたね」(佐多さん)

 ただ漫然と神社に行っても成功は望めない。正しい作法で参ることも重要だ。

「神社に行って祈ることは自分を見つめ直す絶好の機会です。神社は自分は何をしなければならないかを明確にする場所でもあるのです」(前出の小和田さん)(本誌・鮎川哲也)

週刊朝日  2017年1月20日号