平成28年12月23日、天皇誕生日の一般参賀 (c)朝日新聞社
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 美智子さまご成婚までの1カ月間、正田家でお手伝いをしていた内田雅子さん(78)が明かす、ご成婚前の美智子さまの素顔とは。

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 私が日清製粉に入社したのは昭和31年のことです。

 当時、日清製粉の社員たちは東京・用賀のテニスコートに集まることが多く、正田美智子さまもよく参加されていらっしゃいました。

 印象深いのは、昭和33年の出来事です。私はテニスラケットをネットに立てかけて忘れていたのです。同僚たちの横で、「私、ラケットをどこに置いたのかしら」と、ボソリと口にしたのです。もちろん誰も聞いてはいません。

 10分ほどたったころ、美智子さまが私のラケットを持ってきてくださったのです。驚きました。通りがかりに私の独り言を耳に入れられたのでしょうか。しかも、どれが私のラケットかなど、ご存じのはずはない。ズラリとネットに立てかけられたラケットの持ち主をひとつひとつ確かめてくださったと思われます。「困っている人を見たら助けるように」と教えられても、人はなかなか実践できないものです。しかし、美智子さまは、そうあろうと努力なさる方なのです。

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