札幌の公演が終わった後、座敷のある居酒屋で、バンドのメンバーや日本人のクルーたちと打ち上げをしたが、ボウイも参加した。

「まさかボウイが来るとは思ってなかったんですけど、普通にやってきたのでみんなビックリしましたね。気さくな感じで、気取らないし、上から目線というのが一切なかったです。彼は日本食が好きでしたね。豆乳をよく飲んでました。地方に行くと自動販売機で豆乳が売っていたりするんですけど、それを買って飲んでいたこともありました。あと、日本酒も好きですし、日本贔屓ですね。京都も行きましたし、日本文化にすごく興味がありました。とてもフレンドリーでしたけど、あのときはティン・マシーンというバンドで来ていたというのも大きいかもしれないですね。デヴィッド・ボウイとしてのパフォーマンスじゃなくて、バンドの一員だったので、構えずに素になっていたのかもしれないです。デヴィッド・ボウイのように目先のことに惑わされない人、いい意味で、マイペースで自分を追求する人はその後、会ったことはないですね」

 さらに一部の人しか知らないとっておきのエピソードも明かしてくれた。

「そのホテルで、朝、ボウイに呼ばれて、部屋に行ったら、こういう入れ墨を入れたいと、原画を見せてくれたんです。当時の奥さんへのメッセージが英語で書かれた文章と、イルカっぽい生き物に乗った、耳の大きな少年のイラストが描かれてましたね。それをどうしても足に彫りたいと言うので、東京の事務所に連絡し、ファクスでその原画を送って対応しました。ふくらはぎに入れたんですけど、入れ墨を入れたのはこのときが初めてでしたね。足なので、入れ墨が入っていたことを知っていたのは、彼の近くにいた人だけだったと思います」

(構成/ライター・Jun Kawai)

週刊朝日 2016年12月30日号より抜粋

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