放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、「卵サンド」について。

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 楽屋の流行りの「さしいれ」“サンドイッチ部門”が、カツサンドから卵サンドに代わりつつある。

 カツサンドは「まい泉」を筆頭に、局弁として利用されたり、収録の合間に、ちょっとつまんだりするのにも最適。「トンカツ」は、ゲン担ぎにもなるので、新番組の取材現場に宣伝部のスタッフが用意してくれたりもする。

 が、「カロリーが気になる」「ちょっと重たい」という意見が女性タレントからチラホラ出ていたのも事実。

 代わって、利用されはじめたのが卵サンドというワケだ。

 カツサンドのときもそうだったが、「こんな店の、こんな変わった卵サンドを見つけた」という芸能人が、ここぞという場面でさしいれている。

 卵サンドというと、刻んだゆで卵をマヨネーズで和えて……というのが、もっともポピュラーだと思うが、最近は、卵そのものにこだわっていたり、ゆで卵ではなく卵焼きやオムレツのサンドイッチが人気。それも、出汁巻き卵だったり、お寿司屋さんの卵焼きだったり、卵焼きの幅の広さを売りにしているところもあったりする。

 
 このブームの火付け役と言えば、何といっても「天(あま)のや」だろう。関西風の出汁巻き卵に、ちょっときつめにマスタードを利かしたマヨネーズソースが大人の味。グルメで有名なアンジャッシュの渡部建が自著で紹介したのがきっかけとなって、テレビ番組で頻繁に紹介されることとなった。

 その渡部も出演していた「日曜もアメトーーク! 初回2時間SP」(テレビ朝日系)のさしいれに利用されたのが「天のや」のたまごサンド。さしいれたのは渡部ではなく、テレビ朝日の編成局員だったとアンタッチャブルのザキヤマ(山崎弘也)が言っていた。

 この「編成から」というのは、初回の収録だったり、高視聴率が出たときや、何百回記念など、お祝いのとき、制作よりも偉い(とされる)部署からさしいれられる、ちょっといいモノだ。

「天のや」は麻布十番にあるので、六本木のテレビ朝日とはご近所の間柄だし、家紋入り紙包みの箱を積み上げた様は、実に高級感に溢れていて、前室にあるとテンションが上がる。

 件(くだん)のザキヤマはじめ、ブラックマヨネーズの小杉竜一、千鳥のノブ、サンドウィッチマンの伊達みきお、ニッチェの江上敬子、ゆりやんレトリィバァら、「ついつい食べ過ぎちゃう芸人」でなくても、ついつい食べ過ぎちゃうのである。

週刊朝日 2016年12月9日号

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山田美保子

山田美保子

山田美保子(やまだ・みほこ)/1957年生まれ。放送作家。コラムニスト。「踊る!さんま御殿!!」などテレビ番組の構成や雑誌の連載多数。TBS系「サンデー・ジャポン」などのコメンテーターやマーケティングアドバイザーも務める

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