超富裕層を利する政策を次々導入し、批判を集めたオバマ大統領 (c)朝日新聞社
超富裕層を利する政策を次々導入し、批判を集めたオバマ大統領 (c)朝日新聞社
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「まさに“予言の書”となってしまいました……。予想どおりの選挙結果です」

 こう明かすのは、国際ジャーナリストの堤未果さんだ。予言の書とは、今年7月出版の『政府はもう嘘をつけない』(角川新書)。トランプ現象の背景と行方について書かれてある。

 堤さんによると、今回の大統領選のキーワードは「お金」。期待されたオバマ政権だったが、格差が拡大し、多くの米国民が失望。その理由の一つは「政治とカネ」だと指摘する。

「米国の政治にまつわるカネの動きを探ると、国家を動かしているのは1%の富裕層という構図が見えてきます。米国では政治家への企業献金には事実上の上限がなく、企業は政治家に献金することで、自社に都合の良い政策を“買う”ことができるのです」

 つまり、超富裕層にとって政治はローリスク・ハイリターンの優良投資なのだ。オバマ大統領も、当選時には政治とカネの問題に手をつけると公約に掲げていたが、就任後はうやむやに。

「なぜなら1度目の選挙で、彼が大企業やウォール街を中心に集めた政治献金は、史上最高の7億5千万ドル(約750億円)。2度目の選挙では10億ドル(約1千億円)に跳ね上がっていたのです。皮肉にもオバマの8年が、問題が“1%vs.99%”の党派を超えた構図にあることを気付かせてしまった」

 ドナルド・トランプ氏は選挙資金を企業献金に頼らず自腹で工面して信頼を集めた一方、ヒラリー氏は巨額の企業献金と金銭スキャンダルが不利に働いた。

「今回の選挙戦は『1%の富裕層による、1%のための政治』に対し、米国民がNOを突き付けた結果なのです」

「政治とカネ」が争点だった今選挙戦は「トランプ・サンダース現象」を1セットで見れば腑に落ちるのだ。

「この結果を出した“反グローバリズムと金権政治への怒り”に期待したい。次は日本ですよ」

週刊朝日  2016年11月25日号

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