――09年、夫はプロレスの試合中に左足かかとを粉砕骨折。8カ月の休業を余儀なくされてしまう。
夫:ケガで一気に仕事がなくなったんです。精神的にかなり参りました。医者にも「元に戻れる確率はよくて7割」と言われて、お先真っ暗で……。
妻:もともと彼は明るい性格で、悩んでも寝たら忘れるタイプ。でもあのときは、さすがに落ち込んでた。それに決まってた仕事があったんだよね。
夫:そう、ミュージカルの舞台があったんです。
妻:練習してたのに、降板することになって「代役の人にも申し訳ない」って。
夫:こんなにへこんだのは人生初でしたね。
妻:そのとき、すぐに思ったんです。「私がなんとかしよう。働こう」って。でもまずタレントの仕事は無理だと思った。芽が出ないと思ったからやめたんだし、かといって普通の会社勤めも1歳の子どもがいるから厳しい。いろいろ試行錯誤するうちに「主婦目線で何か物を作って売りたい」と思ったんです。
――そこで思いついたのが、昔から好きだった固形せっけん。当時、固形せっけんには古くさいイメージがあり、なかなか使いたいものがなかった。そこで「アロマの香りをつけた、保湿効果の高い固形せっけんがあれば……」と考えたという。
妻:成分も調合のことも何も知らなかったけれど、工場に電話をして「こういうものを作りたい」って相談したんです。
夫:そのころ僕は彼女が何をしてるか、よく知らなかったんです。
妻:もちろん簡単にはいかなかった。でもとにかく何か仕事を見つけないと、と思って動きました。昔は「やりたいな」って思ってても、あんまり行動に移せないタイプだったんです。でも彼がケガしてから「いまやらないとダメだ」っていう気持ちになって、行動的になりました。
――妻は4カ月でせっけんを完成させ、ブログで発信。発売初日に6千個を完売させるヒットとなる。その後も「骨盤スパッツ」など次々とヒット商品を生み出し、12年には年商5億円にまでなった。