買い物といえば百貨店だった時代は今は昔。各社はこの苦境をどう乗り切るのか (※写真はイメージ)
買い物といえば百貨店だった時代は今は昔。各社はこの苦境をどう乗り切るのか (※写真はイメージ)

 複合店とネットショップの台頭などを要因として、相次ぐ閉店を余儀なくされている百貨店。この苦境をどう乗り切るのか。麗澤大学経済学部の圓丸哲麻准教授によると、各社の動きは大きく三つの流れに分けられる。

 一つは、三越伊勢丹ホールディングスの伊勢丹が進めるセレクトショップ化の路線。自社のバイヤーが選ぶ商品を自社売り場で売るスタイルだ。業界でもこの比率が3~5%あれば十分高い部類に入るが、伊勢丹は1割近くと高い。

「各社は伊勢丹のような売り方をしたいのが本音」

 と圓丸氏。

 一方でSC業態を巧みに活用してきたのは高島屋だ。中でも本格的な郊外型SCとして69年に開業した玉川高島屋S・C(東京都世田谷区)は野原と畑が広がる地に出店し、まちづくりをリード。街の発展やニーズに合わせて成長を遂げ、結果的に高額商品の販売にもつなげているという。柏市でそごう柏店と競合していた高島屋もこのタイプだ。

 最後はJフロントの大丸・松坂屋だ。ブランド力のある「屋号」を武器に有力・人気テナントをチョイスして店づくりをするスタイルだ。自社売り場以外のテナントを積極導入している点が特徴という。「新百貨店モデル」と名付けて東急ハンズなどの大型テナントのほか、大丸は京都・祇園の町家を借り上げて店舗とするなど、地域ニーズに合わせた店舗づくりを進めてきた。来春開業の「GINZA SIX」は、「それでも足りないから」(Jフロント・山本社長)打った一手という。

 従来の枠組みを超えた挑戦に各社は活路を見いだそうとしているのだ。

 店舗もピーク時から2割超減り、今も閉店が続く百貨店業界。次なる波乱はあるか。国内一、いや世界一の乗降客数を誇る新宿駅の周辺でこんなうわさがある。

「小田急が何かをやりたがっている」

 小田急百貨店は電鉄系百貨店の一つ。新宿駅西口にある新宿店が旗艦店だ。近年は周辺のビルも買収。昨春に親会社の小田急電鉄が出したグループ中期経営計画に初めて「新宿西口における再開発計画の検討」と記し、動向が注目されている。

 小田急百貨店のOBによると、新宿店は大きく三つの建物からなり、一つは東京メトロの建物。老朽化が進む中、5年ほど前には「これが最後」と小田急側に通告して一部改修を実施したという。遠目に高さが凸凹なのは、建築基準法改正の前後で建築可能な高さが変化したためとか。ある取引業者は言う。

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