「トップを目指して努力していた平さんらしい」(田中さん)
数々の舞台やテレビドラマに出演し、スケールの大きさと緻密さを兼ね備えた演技で観客を魅了した。
「まるで呼吸をするように、人生をかけて芝居に打ち込んだ破格の俳優」
と表現するのは、詩人の高橋睦郎さんだ。ふたりは、高橋さんが台本を書いたギリシャ悲劇「王女メディア」の初演以来約40年の付き合い。王女メディアは、平さんの生涯の当たり役だ。
高橋さんが、最後に平さんに会ったのは10月8日。平さんから「『クレシダ』を見に来てほしい」と電話を受けた。それまで高橋さんは自身が関係する舞台以外で、平さんに観劇を頼まれたことはなかった。難しい台本だけに、平さんの演技には迫力があった。楽屋を訪ねて「よかったです」と声をかけると、平さんはうれしそうに笑った。
28日の告別式では、長男の平岳大氏が喪主を務め、「王女メディア」で使用された曲であるヘンデルの「サラバンド」が流れる中、出棺した。
※週刊朝日 2016年11月11日号