たとえば、横浜市にある港南台の住宅地。1970年代、80坪の一戸建てが1億4千万円で販売されたこともあったが、現在その物件は2千万円でも売れないという。牧野社長は「地方の過疎地と一緒です。現状ではよっぽど立地条件がいい物件でない限り売れず、売れたとしても赤字になることが多い」と説明する。
売れなければ、貸すという選択はどうか。まず、貸して入ってくる家賃収入と、管理委託費やメンテナンス費用など支出を試算することが必要だ。大久保氏はこう話す。
「リフォームや外壁の補修費用を、賃料で回収するのはなかなか難しいですね。特に地方は家賃7万円で回収するとしたら、『10年単位で計算したら赤字でした』と言う人もたくさんいます。都内23区の良い場所の新築マンションでは賃貸が成立する可能性はありますが、貸す選択は収支が合いにくい」。更地にすると、固定資産税が最大6分の1に軽減される優遇がなくなる。
加えて、東日本大震災の復興工事や20年の東京五輪の影響で、建設作業員が不足。更地にするためにかかる解体費用が予想以上に高騰している。
空き家がなかなか売れないなか、大久保氏はこうアドバイスする。
「インターネットで同じ地域の同じような家の価格をあらかじめ調べ、不動産会社3社程度に査定を依頼しましょう。なぜその価格になるか根拠を合理的に説明できる業者と、1週間に1回以上の状況報告義務がある『専属専任媒介契約』を結んでください。相場より低めの価格設定にして、住宅の購入意欲が高まるボーナス時期、経済が上向き株価が上がり始めたときに売り出すことが大切です」
最近では、自治体が移住、定住を促進するため空き家を紹介する「空き家バンク」をもうけるケースもある
しかし、不動産売買を仲介する大手不動産会社であっても、悪質な取引事例が増えているのだという。NPO法人空家・空地管理センターの上田真一代表が実態を明かす。
「相場価格5千万円の物件を4千万円と査定する。1年間塩漬けにし、売り手の不安をあおり、最終的に不動産業者が3千万円で買い取ります。その物件を4500万円で売って、手数料を2回稼ぐという、悪辣な構図です。大手企業だから安心ということはありません。中小企業でも、地元の事情に精通した経験豊かな営業マンをシビアに探したほうがいいでしょう」
※週刊朝日 2016年10月14日号より抜粋