ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌新連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、競泳の瀬戸大也選手と萩野公介選手を取り上げる。

*  *  *

 ひねくれ者の私も、オリンピックの狂騒に身を任せる夏です。意外だったのが、ブラジルの美的センス。かなりインテリ&ピースを意識した挙句、すべりまくった感のある開会式の演出や、競技会場全体に配した緑と黄色の野暮ったさ。是非とも閉会式は、南米の乱痴気プライドが炸裂してくれるのを期待しています。何なら次期開催国から明菜の「ミ・アモーレ」を送り込みましょうか?

 ともあれ今大会は、ここ数年私の妄想恋人第1位である、競泳の瀬戸大也選手が、初の五輪出場ということもあり、私も「選手の妻またはフィアンセ」の心づもりで臨んでいる次第です。

 アモーレとしてコメントを求められた際の、マスコミ対応策なども万全にシミュレーションしています。そんな瀬戸選手、長年の同学年ライバル萩野公介選手との直接対決は、萩野金・瀬戸銅という結果に。それにしても、このふたりの関係性とストーリーは実によくできています。これでまた東京五輪に向け、格好の「感動コンテンツ」としての磐石さと同時に、久しぶりにアスリート界に誕生した男子アイドルユニットの地位も確立したと言えます。

 彼らのようなライバル関係にある同世代アスリートの歴史は長く、長嶋・王のONを筆頭に、桑田・清原のKKコンビ、ソウル五輪男子体操の清風コンビ(池谷・西川)。若貴ブームにオグシオ、ハンカチ王子とマー君など、役者がふたり揃うことで生まれる価値や魅力が確かにあります。

 単なる好敵手であるだけでなく、双方のビジュアルバランスもかなり重要です。例えばザ・ピーナッツに代表される「双子感」。ユニフォームが同じアスリートは、これに該当しそうな気がしますが、体型や髪型にも統一感が必要となってくるため、実はなかなか難しい。一方で聖子・明菜的な陽と陰や、マツコさんと私のような横と縦といった「凸凹感」の方が、見せ方としては効果的だったりします。なぜなら、コンビ鑑賞の醍醐味は、「ふたりの関係性をあれこれ妄想する」ところにあるからです。

 
 中でも最も需要の高い妄想パターンは、「実はふたりはデキている」という所謂(いわゆる)“やおい”的なもの。切磋琢磨しつつも、互いの苦楽を身に刻む内に、ほのかな禁断の情が芽生え、試合とは違う「凌駕(りょうが)の渦」に堕ちてゆく……。この類の妄想を煽れるか否かが、コンビの商品価値やアイドル性に大きく関わってきます。お笑いコンビだと、やおい界の殿堂入りをしたダウンタウンに代わり、現在ではオードリーが、向かうところ敵無しと言われています。女性だとハリセンボンや阿佐ケ谷姉妹などに、得も言えぬ味わいを求めるユーザーが多いとのこと。私もかつてV6の森田・三宅(剛健コンビ)を相当ぐちゃぐちゃに料理させて頂きましたし、サッカーの小野伸二と稲本潤一が、今も同じチームメイト(しかも札幌)という事実は、まさに垂涎ものです。

 かくして、瀬戸クンと萩野クンも国民的コンビとなり、腐女子・腐カマたちの脳内を潤す存在となるのか。私の見立てだと、背丈のバランス、兄(萩野)弟(瀬戸)対照的なルックスやキャラ、互いを「親友」と呼び合う青臭い関係性など、素材としてはかなりのメダルラッシュが期待できると踏んでいます。私にとってオリンピックは、8割方『エロの祭典』なのです。がんばれ! 日本。

週刊朝日 2016年8月26日号