中学校の保健室には、さまざまな困難を抱えた生徒たちが「居場所」を求めて集まってくる。親も気づかない子どもの苦しみと向き合っているのは「保健室の先生」である養護教諭。思春期の子どもの依存症の実態を報告する。
東京の中学校の保健室。ある日の始業直前、3年女子が静かに入ってきた。養護教諭が女子に「昨日は塾だった?」「寝不足?」と尋ねる。女子は言葉を発さずに、こくりとうなずく。「じゃあここでリラックスね」とソファベッドに案内されて横になった。
彼女が休むと、養護教諭は私に小声で言った。
「先週から毎日来ているんです。塾にたくさん通わされて、体が追いつかないみたい」
2カ月後。生徒のいない朝の保健室で、養護教諭が私に「最近、あの子がエナジードリンクを飲みすぎていて」と困り顔で打ち明けた。
エナジードリンクとは、カフェインやアルギニンなどの成分の入った炭酸飲料のことだ。清涼飲料水なので、コンビニなどで手軽に買うことができる。
養護教諭が事態を把握したきっかけは、その女子が「頭が痛い」と言って来室したことだった。脈拍を測ると、1分間で120程度ある。普段から脈の速い子ではない。不審に思った養護教諭が「今朝は何を食べた?」などと確認するうち、登校前、カフェイン量の多いエナジードリンク2本を一気飲みしていたことがわかった。
カフェインは頭をすっきりさせる効果がある一方で、過剰摂取を続けると、切れたときに頭痛や不安感、倦怠感などが表れることが識者によって指摘されている。子どもは大人よりカフェインの作用が強く出るので注意が必要だ。中毒死の例もある。
彼女はすでに、注意されても抑制できないほどはまっているらしい。そんな話をしている最中、1時間目が終わって休み時間になった途端、当の彼女が駆け込んできた。
「せんせー、じんましん出ちゃった!」。さすっている左腕は、かきむしったのか真っ赤になっている。養護教諭がすかさず尋ねる。