2014年8月の台風11号では、青野原地区の国道413号沿いの残土処分場から約500立方メートルの土砂が崩落し、横浜市の水源となる道志川に流れ込んだ。投げ捨てた残土の踏み固めが甘かったのを市が適切に指導できなかったのが原因だ。約500メートル下流にあるレジャー施設、亀見橋バカンス村の萩原旭さん(80)は、崩落で清流が濁ったせいで客足が3割減ったと憤る。
神奈川県建設リサイクル課によると、バブル期後の92年から98年度にかけて県内に不法投棄された残土面積は55万平方メートルに上る。その後、県の残土条例を経て相模原市が11年に全国でも厳しい残土条例を制定した。
搬入残土量に応じて業者に保証金を課し逃げ得を許さない仕組みをつくり、大規模な残土処分場の計画は鳴りを潜めた。
それだけに住民にとって今回の新国立競技場の残土処分場計画は「寝耳に水」。
リニア計画もあり、大量の残土が出るため、処分場の先例にしたくない。
搬入業者は取材に対し、「反対運動があるなら計画の見直しも」と答えた。
新国立競技場の運営主体である日本スポーツ振興センターはどう考えるのか。
「施工主の大成建設とまだ建設工事の契約を結んでいません。残土搬入に関しては、法令を遵守し住民の理解を得ながら進めるのは当然と考えています」(新国立競技場設置本部)(桐島 瞬)
※週刊朝日 2016年8月5日号
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