ブラックコーヒーがおいしい季節である。ジャズファンにコーヒーは欠かせない。何を隠そう、香り高く、うまいコーヒーは、ジャズを良い音で聴かせる作用があるからだ。
コーヒーとジャズ、この相性のよさを発見した人は天才だ。これこそわが国にジャズ喫茶という文化が根付いた大きな原因のひとつではないかと、わたしなんぞは密かに思っている。
ジャズ喫茶のコーヒーは不味いものと決まっているが、上手に淹れたうまいコーヒーを飲みながらジャズを聴くと、あーら不思議。一瞬にして音が良くなるのである。地元大阪梅田の駅ビルにも、「パイルドライバー」という、いつもうまいコーヒーを飲ませてくれるジャズ喫茶があって、そこでいい香りのコーヒーを口に運ぶと、音質のグレードがぐーんと上がって聞こえてくるのである。
このへん、人間の感覚とはいいかげんなものというか、なんというか、快感を感じる神経が、コーヒーとジャズは近いところにクロスしているのだろう。
さて、JimmyJazzでは、頼まれもしないのにジャズを流しているわけだが、これまた頼まれもしないのに散髪が終わったあとのサービスとしてコーヒーも淹れている。もちろんコーヒーが好きな人もいれば、嫌いな人もいるから、飲む人、飲まない人、さまざまである。
しかし、一口飲んだかと思うと、あとタップリ残して帰る人も時々ある。つまり、これは不味い、飲めない、という意思表示なのである。
音が良くない、うるさいといわれるのもこたえるが、コーヒーが不味いと無言のうちに示されるのも小心者のわたしには相当こたえる(そんならジャズもコーヒーもやらなきゃいいのに)。
昔は味のついた水が出てくるだけでも有難かったものだが、今では皆さん口が肥えて、不味いコーヒーなんぞ、たとえタダでも飲んではくれないのだ。
たしかに味見してみると、とんでもなく不味いコーヒーを淹れてたりして、自分でもゾッとすることがある。同じCDを同じ装置で鳴らしても毎日違う音がするように、コーヒーも、同じ豆を同じ水で淹れても、うまいコーヒーになったり、不味いコーヒーになったりするから、ひじょうにややこしい。
コーヒーの世界も奥が深いようで、妙に深入りすると、またとんでもないことになりそうなので、珈琲専門店じゃないんだからと自制している。ドリップ式のコーヒーメーカーを使い、豆は挽いたものを買ってくる。開封して、即淹れたほうが香りも味もよさそうだが、実はそうでもない。豆をフィルターにセットして、しばらく放置しておいたほうが、うまいコーヒーが出る。
そうやっておいて、散髪がちょうど終わる5分前くらいにコーヒーメーカーのスイッチを入れておくと、ちょうどいいタイミングでコーヒーが出来上がる。
ところが、せっかく淹れたコーヒーも、急いでる人なんかは飲まずに帰ることもある。保温で煮詰めてしまうと香りが飛ぶので、残ったコーヒーは自分で飲むか、棄てるか。
客が飲むかどうかわからないものだから、これを焦って段取りを無視し、飲むかどうか確認を取って、あわてて淹れて出したものは、やはり味がよくないのである。
水もアルカリイオン水がいいとか、大阪市の水道水のほうがうまいのだとか、諸説あってなかなか決めがたい。水道水も、うまいときと不味いときがたしかにあるからだ。
そして肝心なのが、空気の湿度。乾燥しすぎているとコーヒーも蒸らしが足りずに不味くなり、オーディオの音も悪く、おまけにハサミもカミソリも切れなくなるから、当店にとってはじつに悩ましい問題なのである。
【収録曲一覧】
1. ブラック・コーヒー
2. アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン
3. イージー・リヴィング
4. 私の心はパパのもの
5. イット・エイント・ネセサリリー・ソー
6. ジー,ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー
7. ア・ウーマン・アローン・ウィズ・ザ・ブルース
8. 時さえ忘れて
9. ホエン・ザ・ワールド・ウォズ・ヤング
10. ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー
11. ユーアー・マイ・スリル
12. ゼアズ・ア・スモール・ホテル