このX氏は、養鶏協の理事でもある。X氏と江藤氏の関係は深く、江藤氏の政治団体の政治資金収支報告書によると、13年から15年までにX氏は250万円の個人献金をしている。前出の養鶏協の関係者は、

「Xさんは江藤議員と親しく、農水副大臣になったときは『次こそ大臣だ』とめちゃくちゃ喜んでいた。『江藤先生ほど養鶏を理解してくれる議員はいない』と言っていて、選挙になると社員まで応援をしていました」

 森山氏、江藤氏が現金を受け取ったのは昨年9月末、宮腰氏は昨年秋ごろだという。これは、TPP交渉が大筋合意をした昨年10月の米アトランタ会合のころだ。そして、3人とも受け取った現金20万円は翌年2月ごろに返金したことで一致している(西川氏にも金額や現金のやり取りの時期をたずねたが、期限までに回答はなかった。

 2月は、栗木氏が養鶏協の理事会で、理事たちに自民党議員へばらまいた“裏金”の分担を求めた時期とも重なる。

「栗木さんの話はあっという間に業界に広がって、自民党サイドにも情報が伝わった。さすがにマズイとなって、何人かの自民党議員があわてて返金したそうです」(畜産団体幹部)

 なぜ、自民党議員と養鶏協の間で、このようなカネのやり取りがあったのか。前出の理事はこう解説する。

「当初、協会はかたくなにTPPに反対していました。ですが、いくら酪農業界や畜産業界と結束して反対だと行動をしても、関税撤廃は避けられないことがわかった。そこで、安倍政権が言っていた国内向けの『TPP対策予算』を狙うべきだとなった。それで協会幹部から『鶏卵業界に予算をもらうなら、政治家ともっと密接になったほうがいい』という声が出始めた」

 自民党議員と、国から多額の補助金を受け取っている養鶏協との不透明な現金のやり取りに、疑念は深まるばかりだ。「政治資金オンブズマン」(大阪市)の阪口徳雄弁護士は、政治資金規正法違反の容疑で、自民党議員4人と栗木氏を東京地検に告発する予定だ。

「政治資金規正法では、選挙活動以外の個別の政治活動への献金は禁じられています。今回の『餞別』は、明らかにTPP交渉やTPP対策予算に対する寄付で、違法です。また、TPP対策予算の増額の趣旨で要請していれば、贈収賄に問われる可能性もあります」

 養鶏協は江藤氏への現金について、こう回答した。

〈本年2月に、江藤議員事務所の方が『栗木氏に返金してほしい』とのことで(中略)後日栗木氏に渡したという事実があります〉

 また、他の自民党議員への献金については、

〈当協会は、いかなる政治家にも一切献金をしておりません〉

 6月末、海外出張から戻ってきた栗木氏に取材を求めたが、応じなかった。

 TPPをめぐって動く莫大な国民の税金の裏でうごめく「政治とカネ」。この問題に終止符が打たれる日は来るのか。(今西憲之/本誌・西岡千史)

週刊朝日  2016年7月15日号

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