
「葬式後のラーメン」「冷蔵庫にあるもので作ったぼそぼそした焼きそば」――ドラマ「昨夜のカレー、明日のパン」のなかで妻・高山なおみさんが作った料理だ。素朴なのにパワーと物語を持つ料理は人々に支持され、料理本や日記本など著作のファンも多い。その著作に常に登場するのが発明家の夫・スイセイ(本名・落合郁雄)さんだ。出会いから7年後の95年に結婚。高山さんが文章を書くきっかけを作ったのもスイセイさんだという。
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夫:みい(高山さんの呼び名)が作文に興味を持っていることがわかったから、オレの発案で店のフリーペーパーを作って、そこで高山のエッセーの連載を始めたんです。
妻:スイセイは厳しいから、全然褒めてくれないんです。
夫:主語・述語ができてない。
妻:「ある人が出てきて、その人がどうなったのか書いてない!」とか(笑)。書きたいことがいっぱいあって追いつかなかったし、文章の構成みたいなこともわからなかった。
夫:「自分の書いた文章にうっとりして、泣いてどうするんだ!」って。
妻:でもフリーペーパーは60号くらいまで続いたよね。それを出版社の編集者が見てくれて、初めての本につながったんです。当時は女性シェフが珍しかったこともあって、メディアに取り上げられて、急激に忙しくなったのね。
夫:でも最初のころ、みいは自分の立ち位置に、ちょっと困っとったよな?
妻:化粧品会社からコマーシャルの出演依頼まできたりして。