「日本会議は安倍さん、麻生さんら2、3世の世襲保守系議員を囲むサロンみたいな組織で、実質的な力はない。武道館で集会をやれば1万人は集めるかもしれないが、世論への影響力はあまりない。政治家が入っているのは、選挙のときに役に立つかもしれないと思って、お付き合いで入っているだけですよ」
一方、前出の俵氏の見解はこうだ。
「日本会議は、極右的な思想を持つ自分たちの存在があまり注目されると、安倍政権に迷惑がかかると考えているのではないか。『美しい日本の憲法をつくる国民の会』など、日本会議と重なる人脈でテーマごとに別団体をつくっていることにも、日本会議の名を目立たせない意図を感じる」
日本会議が安倍政権を陰から操っているという指摘もある。だが、菅野氏はそんな見方には異を唱える。
「安倍首相の側もどうすれば有権者の支持が得られるかを計算して、主体的に政策を選んでいる面がある。民主党に政権を奪われていた時代、安倍氏が売りにするテーマは経済政策に加え、民主党政権への有権者の反感を背景とした『反左翼』があった。それが日本会議の路線とぴたりと一致したことで、現在のような蜜月の関係になっているのでしょう。今の日本社会全体の空気が『反左翼』になっていることが背景にある」
日本会議との関わりを取り沙汰されている生長の家は、日本会議の主張する改憲右派路線は、現在の同会の信念とは全く異質であり、7月の参院選でも「与党とその候補者を支持しない」と表明。次のように警鐘を鳴らした。
<公明党以上に、同会議は安倍首相の政権運営に強大な影響を及ぼしている可能性があります。(略)元生長の家信者たちが、冷戦後の現代でも、冷戦時代に創始者によって説かれ、すでに歴史的役割を終わった主張に固執して、(略)隠密的活動をおこなっていることに対し、誠に慚愧に耐えない思いを抱くものです。(略)はっきり言えば時代錯誤的です>
安倍政権は日本をどこへ導こうとしているのか……。(本誌・小泉耕平、秦 正理)
※週刊朝日 2016年6月24日号より抜粋