BUFFALO SPRINGFIELD / BUFFALO SPRINGFIELD AGAIN
BUFFALO SPRINGFIELD / BUFFALO SPRINGFIELD AGAIN
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 デビュー作『バッファロー・スプリングフィールド』がロック・ファンやメディアから好意的に受け止められ、つづいてスティルスの書いた「フォー・ホワット・イッツ・ワース」がヒットを記録したこともあり、ニールの生活は大きく変わる。21歳になったばかりで、しかも違法滞在だったにもかかわらず、家や車を手に入れ、トパンガ・キャニオンのコミュニティにも溶け込むことができた。そして、その新しい暮らしのなかで、たくさんの人と出会い、曲づくりに関してもさまざまなインスピレーションを得たようだ。
 ライヴでの人気も高まり、とりわけ、ニールとスティーヴンがイーヴンな関係で向かいあうギター・コンビネーションは注目を集めた。東海岸にも進出している。もちろん、いいことばかりではなかった。ベースのブルース・パーマーはドラッグ所持で逮捕され、ライヴや録音に穴を開けた。主にスティルスとの対立が原因で、ニールもしばしば姿を消した。
 そのようにして大きく状況が変化するなか、彼らは、67年の年明けから秋にかけて2作目の制作をつづけ、11月、『バッファロー・スプリングフィールド・アゲイン』のタイトルで発表している。
 リッチー・フューレイがソングライターとしての自分を主張するようになったこともあり、ニール作品は全10曲中、「ミスター・ソウル」、「エクスペクティング・トゥ・フライ」、「折れた矢/ブロークン・アロウ」の3曲のみ。やや物足りない感じだが、いずれも初期の代表曲であり、とりわけ、フィル・スペクター・サウンドの重要なスタッフだったジャック・ニッチェと組み、LAの一流セッションマンたちと仕上げた「エクスペクティング・」は素晴らしい。あの時代のロックを象徴する名曲のひとつといってもいいだろう。
 ジャケットを裏返すと、そこには、彼らが影響や刺激を受けた人たちが手書き文字で紹介されている。シャドウズのギター奏者ハンク・マーヴィンからロバート・ジョンソン、ジミ・ヘンドリックス、翌年には一緒に逮捕されることになるエリック・クラプトンまで、約80人の名前をチェックし、彼らとの関係を想像するだけで、一日が終わってしまうはずだ。

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