オン・ザ・コーナー
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『オン・ザ・コーナー』と"アガパン"をつなぐ最重要ギタリストに注目!(前半)
On The Corner (Columbia)

 おいおい、先週は『イン・ア・サイレント・ウェイ』で今週は『オン・ザ・コーナー』かよ、どーなってんだよお、うんもお~。いやいやこれには先週同様、深いワケがありまして。ホントーか? ホントーなんだな? まさか新音源が出尽くして紹介するものがなくなったんじゃないだろうな? いーえ断じてそうではありません。

 すでにこのコーナーでは何度か報告させていただいていますが、小生、目下『オン・ザ・コーナー』を中心とした70年代前半のマイルス検証作業に(誰に頼まれたわけでもなく)突入しております。そこで発見したこと、新たに浮上してきた疑問といったものを当欄で途中経過報告を兼ねて記していこうと考えたわけです。

 最初に大きな結論から書きますと、『コーナー』と『アガルタ』『パンゲア』をつなぐには、まだ相当の音源や文献資料・記録が欠けています。ご承知のように音源に関しては『コンプリート・オン・ザ・コーナー・セッションズ』という、またしてもコンプリートとは言い難いボックス・セットがありますが、コンプリートではないわけですから、なにひとつ解決しないのです。そこで自分で調査に乗り出すことを余儀なくされるといういつもの展開になるわけですが、最重要音源の存在をネット上に発見しました。

 アート・ジャクソンという黒人ギタリストの『Gout』というアルバムです。そう、先日ご紹介した『Unknown Collections Vol.5』(So What)に入っていますね(ただし1曲のみ)。その際にも言及しましたが、アート・ジャクソンの同作は、一説によるとマイルスが制作費を出し、プロデュースを買って出てつくられたものといわれています。そしてテスト盤までつくられたが、レコード会社の意向で発売中止になった。

 問題はここからです。『コーナー』には複数のギタリストが参加していますが、"アガパン"に結びつくような演奏は聴けません。その後マイルスはレジー・ルーカス、ドミニク・ガモー、ピート・コージー等とギタリスト遍歴を重ねるわけですが、じつはアート・ジャクソンの演奏には、レジー、ガモー、コージーの要素がつまっているのです。

 さらに大きな問題はここからです。そのアート・ジャクソンのテスト盤ですが、全曲を聴くと、何かが足りない感が濃厚に漂ってくるのです。なにが足りないのか。そう、マイルスのトランペットです。じつはこの幻になったアルバムは.....というところで次回につづくとしたいと思います。ではまた来週。

【収録曲一覧】
1 On The Corner-New York Girl-Thinkin' One Thing And Doin' Another-Vote For Miles
2 Black Satin
3 One And One
4 Helen Butte-Mr. Freedom X

Miles Davis (tp, org) Dave Liebman (ss) Chick Corea (synth) Herbie Hancock (org) Harold I. Williams (elp) John McLaughlin (elg) Collin Walcott (sitar) Paul Buckmaster (cello) Michael Henderson (elb) Jack DeJohnette (ds) Billy Hart (ds, per, bgo) Don Alias (cga, per) Mtume (cga, per) Badal Roy (tabla) and others.

1972/6/1 & 6 (NY)