CD化が切望されるエムトゥーメやドミニク・ゴーモンの参加作などについて
Paris 1985 (Cool Jazz)
拙著『リヴァーサイド・ジャズの名盤50』(双葉社文庫)に多数の応募をいただき、どうもありがとうございます。前回も書いたのですが、2ページの見開き単位でカラーとモノクロが交互に構成されている、それはそれは美しい文庫です。
今回の文庫でさらに強く確信したのですが、これからのアルバム・ガイド本は、少なくともジャケットはオールカラーじゃないと物足りない感じが濃厚にしますね。もちろん、そのぶん制作費は上がり、定価にはね返ってくるわけですが、少々高くなってもオールカラーのほうがいいと考える人も少なくないと思うのです。そして、いずれは掲載されているジャケットを触れば収録曲が流れてくるという電子書籍(というのでしょうか)として出版したいと、夢は大きく広がっていきます。
それはそれとして、まもなく『エレクトリック・マイルス1972-1975:ジャズの帝王が奏でた栄光と終焉の真相』(ワニブックスPLUS新書)が発売されます(全国的には8日店頭と聞いています)。内容に関しては読んでいただくとして、巻末に参考資料として紹介した関連アルバムがすべてCD化され、容易に入手できるようになることを激しく望んでいます。というのも70年代マイルス・バンドのメンバーに対する評価が芳しくないのも、彼らのアルバムがCD化されていないからであり、肝心の音源が聴かれない限り、再評価の機運も高まらないだろうと思うからです。たとえばエムトゥーメの『リバース・サイクル』、チャールズ・ボボ・ショウの『ストリート・オブ・セントルイス』(ギターのドミニク・ゴーモンが参加している)などは70年代マイルス史に欠かすことのできないアルバム、ぜひどこかのレーベルから出してほしいと切に願います。
さて今回ご紹介するのは、85年7月のパリにおけるライヴ。このメンバー、このレパートリー、この曲順から、もはや名うてのマイルス者には説明の要はないでしょう。そう、まさにイメージどおりの音が飛び出してきます。本日はマイルスの「オッオー」とか「シュワッチ」といったラップの真似事をしたテープもうまくフィットし、臨場感ならびに疾走感は「クーたまらん」レヴェルに達しています(このフレーズ、久々に使ったなあ)。音質も理想的なオーディエンス録音です。
最後にマイルス・ニュース。8月に『ビッチェズ・ブリュー』発売40周年ボックス・セットが出ます。これは例外的に「マスト・バイ」のボックスだと思います。これが約90ドル。そして次にトランペット・ケース入りボックス・セット集大成盤が出ます。これはあえて必要ないかと思います。お値段も約2000ドルですし。というわけで、また来週。
【収録曲一覧】
1 One Phone Call / Street Scenes-Speak
2 Star People
3 Maze
4 Human Nature
5 Something's On Your Mind
6 Time After Time
7 Ms. Morrisine
8 Code M.D.
9 Pacific Express
10 Katia
11 Hopscotch
12 You're Under Arrest
13 Jean Pierre
(2 cd)
Miles Davis (tp, synth) Bob Berg (ss, ts) John Scofield (elg) Robert Irving (synth) Darryl Jones (elb) Vincent Wilburn (ds) Steve Thornton (per)
1985/7/10 (France)