被災者の健康で深刻化しているのが、“エコノミークラス症候群”。断続的に続く強い揺れへの不安から、避難所ではなく、狭い車内で夜を過ごす避難者が増えているためだ。
長時間、同じ姿勢を続けると、足の静脈に血栓ができる。剥がれた血栓が血流にのり、肺の血管を詰まらせると、命にかかわる“肺塞栓症”になりかねない。
「避難所にいる避難者の発症リスクは、通常の5倍。車内泊ならさらに高い」
そう話すのは、東日本大震災で避難者の健康状態を調査した、福島県立医科大学病院心臓血管外科の高瀬信弥医師。足の静脈は心臓より下にあり、重力の関係で流れが悪くなりやすい。筋肉を動かさない状態が続くと血流が滞り、血栓ができてしまう。
「1日2リットル以上の水分摂取と、1~3時間に1度の運動(つま先立ちとつま先を上げる運動を10回や5分程度の歩行)が予防につながります」(高瀬医師)
車中泊の問題は、車内で寝ることではなく、その姿勢にあるという。
「ベッドと同じ環境にするのは難しいですが、できる限り足が伸ばせ、心臓と同じ高さになるように心がけてほしい。寝返りがうてるスペースも確保を」(同)
足の状態を日々確認することも大事だ。朝になっても足がむくんでいる、ふくらはぎを指先で押すと強く痛む状態は、黄信号。動かずに医療関係者を呼んでほしいという。