ムロ:「ほんとに役者をやりたくて大学をやめるんだよな」「はい」って自問自答を繰り返して決断したので、その時の自分に恥をかかせたくないという気持ちでした。5、6年すぎてからは意地ですね。

林:それからオーディションもいっぱい受けたんですか。

ムロ:いっぱい受けて、ほとんど書類審査で落ちました。あとは小劇場に出たりして。

林:ムロさん、ご自分の容姿に特徴がないとおっしゃってましたよね。

ムロ:そう。黙って立ってるだけでカッコいい人でありたいと思っていたんですが、そうじゃないことが26、27歳でわかりました。それでこのウザさやよくしゃべることをウリにするしかないと思って、「ムロツヨシ」を連呼して「僕を使ってください」と言い続けたんです。

林:「ムロツヨシ」って連呼するのは、恥ずかしくなかったですか。

ムロ:「カッコ悪いよ」と言われたことはあるんですけど、恥ずかしいとは思わなかったですね。とにかく役者を選ぶ時に思い出してもらえる人間になりたかったんです。

林:吉田羊さんにもここに出ていただきましたけど、吉田さんは「小劇場時代はすごく楽しくて、下積みとか苦労したとか思ってない」とおっしゃってました。

ムロ:僕は「楽しい」とは言い切れなかったですね。ごはんが食べられなかったので。

林:食べさせてくれる女の人とか、いなかったんですか。

ムロ:夢でした、ヒモになるのが(笑)。朝起きたら5千円置いてあって、その5千円を手にしてパチンコに行って、全部スって帰ってきて、女にメシつくらせて、「俺、役者だから」っていう生活。そんなことしてくれる人、現れませんでした。

林:それは残念でしたね。

ムロ:日雇いのバイトで1日1万円稼いで、パチンコでスってまたバイトして。そんなヤツ、誰もヒモにしませんよね。

週刊朝日 2016年4月29日号より抜粋