「空間線量は原発事故直後より下がったものの、ひどい汚染はまだある。除染が終わった小高区の民家の庭の土や石を測定したところ、1平方メートル当たり2千万ベクレル近い放射能が検出されました。農地の土も汚染されているので、農作物や、畑仕事をする人の被曝も心配です」
汚染とは、放射性物質がモノや食べ物などに付着している状態を指す。原発事故前の土や石などの汚染は1平方メートルあたり千ベクレル程度だった。原子炉建屋の水素爆発による放射能雲が飛ばなかった地域では、いまでもこの水準だ。つまり、福島はいまでもその2万倍も汚染されている場所があることになる。
食の汚染に関しても同様だ。日本では口に入れる物の基準値は、1キログラム当たり食品100ベクレル、乳児用食品50ベクレル、牛乳50ベクレル、飲料水10ベクレルだ。
全量検査をしている福島の15年のコメからは、この基準を上回ったものは出ていない。しかし、1月には本宮市で採取されたフキノトウから110ベクレルが検出され、県は出荷自粛を要請した。昨年9月には福島、伊達、桑折、国見の4市町のあんぽ柿や干し柿から最高値では270ベクレルが検出された。さらに昨年12月に福島県が実施した自家消費野菜などの検査では、全体の6%を超える376検体から50ベクレルを超える放射性セシウムが検出された。基準値以下の数値だが、県は「精密検査をすれば100ベクレルを超えている可能性もある」という。
風評被害は起こしてはいけないが、地元に配慮するあまり、こうした放射能汚染の実態はあまり報道されなくなった。住民からはこんな不安が漏れる。