幻の4枚組が2枚組で公式に登場
Perfect Way:Miles Davis Anthology-Warner Bros. Years (Warner Bros./Rhino)
●幻の4枚組が2枚組で公式に登場
2002年、ワーナー・ブラザーズ/ライノは、大量の既発音源並びに少量の未発表音源で構成された4枚組『ザ・ラスト・ワード』を発売することを公表した。ところがいかなる理由からか直前に中止となり、マニアの期待はあっけなく打ち砕かれた。一説では、プリンスが、マイルスと共演した音源を収録することを拒否したことが原因とされるが、はたして真相はどうだろう。
その幻の『ザ・ラスト・ワード』が、2枚組に縮小されて登場した。タイトルは『パーフェクト・ウェイ』、一見ブートレグのようにみえるが、れっきとした正規品(のように思われる。ただしアメリカ側が正式に許可したものとは限らない)。監修・発売したのはイギリスのワーナー・ブラザーズ、ライナーノーツはマーカス・ミラーとヴィンス・ウィルバーンが書いている。
詳細に関しては別掲データをご覧いただきたいが、ディスクの1枚目では、なんといっても《ラバーバンド》《ディグ・ザット》の未発表音源が注目される。いずれもスタジオ録音で、時期としては『TUTU』の直前にあたるセッションで吹き込まれたもの。ディスク2枚目では、《ポーシア》《カーニヴァル・タイム》《ヒューマン・ネイチャー》のライヴ3連発が公式には初登場となる。1986年7月20日、フランスはニースにおけるライヴから。ブートレグとしてはおなじみだが、こうして晴れて日の目をみたことは、まだまだ不十分とはいえ、一応はめでたし、めでたし。
さらにこの2枚組が「使える」のは、マイルスの最後の10年の足跡がわかりやすく、かつコンパクトにまとめられている点。その意味では、むしろ4枚組よりも2枚組のほうが把握しやすく、結果的に正解だったかもしれない。ともあれマイルス最後の10年はまだまだ未解決や不詳の部分が多く、この2枚組はじつに有効な参照アイテムとして推薦に値する。
前述の未発表音源以外は、『TUTU』『ディンゴ』『アマンドラ』『ドゥー・バップ』そしてクインシー・ジョーンズとの『アット・モントルー』等の有名なアルバムからの選曲、ジョン・リー・フッカーやシャーリー・ホーンとの共演まで入っている。したがって新鮮味はないが、「最後の10年の足跡」を知る上で不可欠の演奏ばかり。こうして再構成されたコレクションのなかで改めて聴くと、見えてくる風景がこれまでと若干異なることに気づかされる。
【収録曲一覧】
Disc 1
1 Tutu
2 Splatch
3 Don't Lose Your Mind
4 Perfect Way
5 Rubberband (previously unreleased)
6 Digg That (previously unreleased)
7 Catembe
8 Mr Pastorius
9 Hannibal
10 Amandla
11 Murder (with John Lee Hooker)
12 You Won't Forget Me (with Shirley Horn)
Disc 2
1 Concert On The Runway (with Michel Legrand)
2 Trumpet Cleaning (with Michel Legrand)
3 The Doo-Bop Song
4 Mystery
5 The Pan Piper (with Quincy Jones)
6 Summertime (with Quincy Jones)
7 Solea (with Quincy Jones)
8 In A Silent Way
9 Time After Time
10 Portia (previously unreleased)
11 Carnival Time (previously unreleased)
12 Human Nature (previously unreleased)
Miles Davis (tp, synth) Bob Berg (ss, ts) Robben Ford (elg) Robert Irving (synth) Adam Holzman (synth) Felton Crews (elb) Vincent Wilburn (ds) Steve Thornton (per) and others
1986-1991 (various dates and places)