「芝居をしていて、楽しいと思うのはどんなときですか?」と訊ねると、「どんな仕事も同じだと思うんですけど……」と前置きして、「基本的には、つらいことのほうが多いです」と言って、南果歩はフフッと笑った。
「喜びや幸福を感じるのは“瞬間”でいいんじゃないかと、私は思っています。たまにあるから、感動も大きいわけで……。いつも、新しい現場に飛び込むときは、不安と恐怖が8割以上(苦笑)。じゃあ、どうして芝居をやっているかというと、実生活以外で、喜怒哀楽のすべてを体験できるような“物語”が、私にはどうしても必要だったからです」
物心ついたときから、急激に熱くなったり、恐怖心に襲われたり。突然湧き上がる激しい感情に振り回されることが多かった。
「そういう、自分の中のマグマのように激しいエネルギーって、日常生活にはほぼ必要ないんですよね(苦笑)。日常は、平らに平らに過ごしたほうが、絶対にうまくいくじゃないですか。子供の頃からずっと私は、溢れるエネルギーをぶつけられる場所を探していたんだと思います」
20代までは、“やりたいことを邪魔する相手とはいつでも刺し違えてやる”といった覚悟で、「心にナイフを忍ばせている感じ」だったとか。