マイルス・デイヴィス・ウイズ・ゲイリー・トーマス&ブラックバード・マックナイト
マイルス・デイヴィス・ウイズ・ゲイリー・トーマス&ブラックバード・マックナイト
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注目の共演メンバーはわかりやすくアルバム・タイトルに
Miles Davis With Gary Thomas & Blackbird McKnight (Cool Jazz)

 久々に硬派マイルス者を喜ばせてくれるアイテムが登場した。サックスがボブ・バーグとゲイリー・トーマスそしてギターがブラックバード・マックナイトという注目のメンバー。制作者もよほど自信があったのだろう、これ以上ないくらいシンプルなアルバム・タイトルに「どうだ、まいったか」という表情がスタンプのように刻印されている。

 はい、まいりました。ぼくはゲイリー・トーマスこそ、この時代のマイルス・バンドに必要な人材だったと考えている。とかく希薄になりがちだった緊張感や危機感を、トーマスのサックスはその音色だけで付加する作用をもっている。もっと言ってしまえば、ボブ・バーグとの2サックスは無駄な努力、トーマス一本でもまったく支障なかったと思う。むしろ2サックスによって焦点がぼやけたきらいがなきにしもあらず。

 しかしマイルスとしては、気持ちの上で、ただ単純に2サックス編成にしたかったのだろう。かつてジョン・コルトレーンとキャノンボール・アダレイを同時に起用したように。とはいえコルトレーン&キャノンボール組とバーグ&トーマス組では格がちがいすぎる。したがって比較してもしようがないのだが、見方によればマイルスだけはバーグとトーマスを誰よりも高く評価していたということだろう。

 このCDは1枚物で聴きやすく、音質もオーディエンス録音ながら自然な広がりがあり、その点でも楽しめる。よってマニアのみならず初心者にも胸を張ってお薦めの1枚。もう一点、ブラックバード・マックナイトの参加も魅力大。結局はフォーリーに辿り着くが、ギタリスト変換期のマイルスにとって、やや相性的に問題ありかもしれないが、マックナイトのファンキーかつグルーヴィーなノリは悪くない。

 ところでマイルスの新音源ラッシュはまったく減速することなく、この連載でもなかなか追いつけない状態になっている。このままのペースでは、せっかくの新着情報がますます遅れ、「旧着情報」になってしまう。そこで今回は特例として、以前から紹介できずに待機していた下記2枚も簡単ではあるが合わせてご紹介しておきたいと思う(ジャケットは掲載しませんが、たいした図柄ではありません)。

 まず『Kumamoto』(Sapodisk)は83年5月22日の本ライヴ。三井グリーンランドという会場で、それなりの録音状態で楽しめる。お客のノリもよく、《カム・ゲット・イット》で手拍子とは珍しい。全4曲の1枚物。

 次いで『Greensboro 1988』(Cool Jazz)は2枚組で、88年6月21日グリーンズボロでのライヴ。オープニングが《イン・ア・サイレント・ウェイ》という展開は、いつ聴いても圧倒的にすばらしく、興奮する。こちらはかなり上級のオーディエンス録音。これは「買い」リストに加えてもいいだろう。ではまた来週。

【収録曲一覧】
1 One Phone Call / Street Scenes-Speak
2 Star People
3 Perfect Way
4 Human Nature
5 Wrinkle
6 Splatch

Miles Davis (tp, key) Bob Berg (ss, ts) Gary Thomas (ts, ss) Blackbyrd McKnight (elg) Robert Irving (synth) Adam Holzman (synth) Darryl Jones (elb) Vincent Wilburn (ds) Steve Thornton (per)

1986/12/28 (LA)

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