教育特区で株式会社が運営する「ウィッツ青山学園高校」に東京地検特捜部の捜査のメスが入った。「就学支援金」の不正受給をめぐって問題となった生徒は3人とされるが、これは氷山の一角だ。議員が生活保護者を学校に斡旋するなど、その悪徳商法の手口を明らかにする。
まだ桜が残る4月中旬、栃木県那須町のとある高級ステーキレストランでは、ウィッツ青山学園の“学校説明会”が開かれていた。
東京や埼玉から集まった6人の参加者を前に、サポート校のひとつ「四谷キャンパス」のB専務理事は慣れた口調で切り出した。
「入学者を紹介してくれれば、1人につき24万円の紹介料をお支払いします」
紹介窓口になれば謝礼がもらえると聞いていた参加者たちも、想定外の高額報酬に思わず顔を見合わせる。
「年収350万円未満の方をご紹介ください。年収がそれを超えると、就学支援金が減ってしまうので、生徒さんが自腹で授業料を払うことになります。それは現実的ではない。うちのビジネスモデルが成り立たなくなりますからね」
就学支援金の正式名称は「高等学校等就学支援金」という。家庭の教育費負担を軽くするために国が授業料を支援する制度で、年収によって就学支援金の金額は異なる。生徒1人あたり年間最大30万円が支給されるが、年収250万~350万円程度であれば支給額は年間23万7600円となる。
ウィッツ青山学園の授業料は、年間23万7600円とまったくの同額。年収の低い人に出る就学支援金をそっくりそのまま学校が受け取り、生徒は授業料をまったく払う必要がないことをウリにしている。
ただ、四谷キャンパスの場合、授業料以外にも、「学習支援料」などで年間約40万円ほど払わなければいけないのだが、B理事はこれにも解決策があるという。
「年収が低い人は年に40万円も払えないと思うんで、奨学金を借りてくれ、というわけですね。奨学金は、埼玉県だと年間48万円。むしろお金が残るんです。奨学金の手続きは全部われわれがやってあげます」
奨学金は将来返さなければいけないのでは、という質問が出たが、B理事は返さなくてもすむ“裏ワザ”指南で切り返した。