パク・ヨンミさん(22)(撮影/伊ヶ崎忍、メイク/得字マキ[nude.])
パク・ヨンミさん(22)
(撮影/伊ヶ崎忍、メイク/得字マキ[nude.])
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 金正日政権下の北朝鮮を、13歳で母とともに脱北したパク・ヨンミさん(22)。北朝鮮での恐怖の生活から、中国で強いられた奴隷花嫁生活など、これまで経験した衝撃の過去を告白した手記『生きるための選択』(辰巳出版)が11月に刊行された。北朝鮮で彼女はどんな暮らしをしていたのか。

──脱北に至った経緯は。

 2007年3月31日の暗くて寒い夜、北朝鮮と中国との間を流れる川、鴨緑江(おうりょっこう)の凍った水面を、母とともに全速力で走って中国に渡りました。そのとき、私は13歳で、体重は30キロしかなかった。胃腸炎を盲腸と誤診されて手術されたばかりで、傷が痛くて歩くのもやっとの状態でした。

 自由を夢見て脱北したわけではありません。なぜなら「自由」の意味すら知らなかったから。わかっていたのは、このまま北朝鮮にいたら、飢えや病気の中で、家族全員が死んでしまうということだけでした。一杯のご飯が食べられるなら命を懸けてもいい、とにかく何でもいいから口に入るものを求めて脱北しました。

 北朝鮮での暮らしは、言葉では表現できないほどつらいものでした。国家が人々の行動や発言をコントロールするだけでは足らず、金一族がどれほど偉大な存在かを刷り込む情報以外はシャットアウトしていた。そうして感性や情緒の面でもコントロールすることで国民を奴隷化していたのです。

 テレビでは国営放送以外は見ることができなかったのですが、おじがビデオデッキを持っていて、闇市で入手したビデオを見せてもらっていました。衝撃だったのはラブストーリーとの出会いとなった「タイタニック」。国や指導者のためでなく、愛のために死のうとしていることに驚きました。そこで初めて愛がどんなものかを知ったのです。

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