──中国へ渡って生活はどう変わりましたか。

 脱北を手助けしてくれた人は人身売買業者で、私と母はだまされて脱北しました。業者を通じて中国人に売られたのです。それは、北朝鮮以上に野蛮で無秩序な生活でした。中国には北朝鮮女性の花嫁売買を専門にしているギャングがいて、北朝鮮側で女性を手配する役、中国側での仲介役などさまざまな人が関わっていました。中国に渡って初めてその事実を知り、母は私を守るために、私の目の前でレイプされました。結局母と私は引き離され、私はギャングの元締の男に売られ、母は農家で奴隷のように扱われていました。二人とも奴隷花嫁としての生活を強いられました。

──どうやって韓国に逃れたのですか。

 韓国人男性と結婚している北朝鮮女性と出会い、その人から韓国へ脱出する方法を教えてもらったのです。韓国へ行けば、脱北者は国民として迎え入れられると聞きました。中国から韓国へ脱出しようとすることのリスクはかなり大きく、もし捕まって北朝鮮に送還されれば一巻の終わり。でも、何としてでも韓国へ行くべきだと思いました。危険を承知で、山東省の青島にあるキリスト教の宣教会の手を借り、再会した母とともに09年に中国からモンゴルへ脱出しました。

 モンゴル政府と韓国政府の間には、中国からモンゴルを経由して第三国をめざす秘密の協定があるようです。それで、韓国から迎えに来た職員らとともにソウルに渡りました。

週刊朝日  2015年12月18日号より抜粋

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