00年代前半から社外取締役を置いていた東芝は、日本のなかではガバナンス体制の整っている企業として知られていたが、今回の不正で、化けの皮がはがれた。

 歴代3社長の報酬体系からも、典型的な日本企業の構図が浮かび上がる。企業統治に詳しいペイ・ガバナンス日本の阿部直彦氏は言う。

「3人の役員報酬(13年度)は、会長の西田氏が1億2700万円、副会長の佐々木氏が1億400万円、社長の田中氏が1億1100万円でした。先進国企業で代表執行役である社長の報酬が執行を兼務しない取締役である会長の報酬より低いなど考えられません。このような報酬体系は、経営責任の所在を曖昧(あいまい)にします」

 東芝にガバナンス先進国の米国と同じようなリスク管理体制が整っていれば、このような事件は起きなかったかもしれない。

 阿部氏によると、米国では、経営者に報酬の5倍から10倍程度の自社株保有を促すという。大量の自社株を持っていれば、株価の下落は避けたいと思い、それが不正に走るのに歯止めをかけるというのだ。

 東芝の3社長も自社株を保有したが、保有数は少なかったという。

 米国の多くの企業では、大幅な会計修正や損失が発生した場合、役員に報酬の返還を求められるクローバック条項を委任契約で盛り込むという。

「東芝がクローバック条項を3社長との契約に盛り込んでいれば、利益減や株価下落で受けた損害分を返還してもらえたでしょう」(阿部氏)

東芝は再発防止策としてガバナンスの強化に努めると主張する。その一つが社外取締役の増員だ。

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