不正会計問題で揺れる東芝が11月7日、異例の中間決算会見を開いた。
「土曜日の決算発表は金融業界の常識としてありえません」(証券アナリスト)
6年ぶりとなる904億円の営業赤字を発表し、メッキが剥げ、家電など本業で稼げていない実情が鮮明になった。
同時に不正会計問題で重要な責任があると、西田厚聡元相談役、佐々木則夫元副会長、田中久雄前社長ら計5人を東京地裁に提訴したことも公表した。
だが、記者から「5人で3億円の請求額は過去の事例からは少なく、手心が加わっている。この内容で社員が頑張ろうとなるのか疑問だ」などの質問が矢継ぎ早に出ると、「本日は決算発表なので、回答する立場にありません」(東芝)とだんまりとなった。
西田、佐々木、田中氏ら歴代社長は辞任後も社用車を乗りまわし、社内を闊歩(かっぽ)していたとも報じられたが、不正の背景には権力闘争があったとされる。
「社長だった西田氏が、業績悪化を叱責。部下だった佐々木氏に圧力をかけた結果、利益の上乗せを指示。田中氏が社長に就任した際は、既に不正会計が進んでいた」(東芝関係者)
同社社員は言う。
「田中さんは良い人ですよ。サラリーマンとして上に従ってきただけなのに、可哀想です」
もともと西田氏と佐々木氏の不仲は関係者の間では知られていた。元経済産業省幹部は、こう振り返る。
「2人は記者会見の場ですらケンカを始めたことがありました。西田氏が記者らに佐々木氏の悪口を言い、佐々木氏もそんな西田氏を非難して応酬。コーポレートガバナンス(企業統治)がなっていなかった」
会社の信頼は大きく失墜し、株価は下落したまま戻る気配はない。どんなに名門企業でも、トップの経営手腕で沈むということが、今回の件で明らかになった。