『ゴジラ』は2年後に全米で封切られたんですが、心ない配給業者の手によって、核廃絶というテーマ性や「地球上で原水爆の競争をやっていると、第二第三のゴジラが出てくるぞ」という志村喬さんの台詞がカットされていました。小癪な敗戦国めということだったのでしょう。

 平成17(2005)年に全米20都市でオリジナル版が上映されましたが、各紙大絶賛でした。東西冷戦も収まり核競争も縮小され、アメリカ人の意識も変わったんですね。やっと聞く耳を持ち始めた。

――宝田さんは映画出演の一方で昭和39(64)年、『アニーよ銃をとれ』でブロードウェイミュージカルに挑み、文部省芸術祭奨励賞受賞。以後『風と共に去りぬ』『マイ・フェア・レディ』などで主演。平成24(12)年には自身が製作・演出・出演した『ファンタスティックス』で文化庁芸術祭大賞受賞。他方、近年は自身の戦争体験をもとに反戦の立場を明らかにし、メディアでも活発な発言を続けている。

 還暦を過ぎたころ、人気商売という立場を理由に、ノンポリを装って一生を終えていいのかという自責の念にとらわれましてね。ちょうど日本社会が右傾化してきた時期でもあって、飾らずへりくだらず、自分の意見を堂々と発信していこうと思ったんです。

 発言を始めてからも、特定秘密保護法、戦争法と、次々に日本は危ない方向に向かっています。

 私の三兄は満州から命からがら帰国したのに、親の愛も兄弟の愛も受け入れられずに、早死にしました。人間の普通の一生が、戦争によってめちゃくちゃにされる、その一つの例が私の肉親に起こったんです。

 私は戦争の否定者、誰が何と言ったって否定するしかない。

週刊朝日 2015年11月13日号より抜粋

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