平均の気温が19度、湿度が69.4%をそれぞれ下回ると、風邪の患者が増える。10月初旬の今がまさにその時期にあたる――。ある製薬メーカーが販売促進用の資料に載せているデータだ。
9月下旬、横浜市のドラッグストアを訪ねると、多くの買い物客でにぎわっていた。マスク、のどあめ、総合感冒薬、漢方薬……風邪の関連商品を手にする人も少なくない。同店の薬剤師はこう話す。
「夏に猛暑が続いた後、急に気温が下がり、雨も多かった。そのせいか、例年よりも早く、9月中旬ぐらいから風邪の商品がよく売れている。とくにのどの症状を訴えるお客が目立つ」
大正製薬が2013年、風邪をひいたときの対処を調査したところ、「市販の風邪薬を利用(57.2%)」が「病院に行った(42.8%)」を上回っていた。
前出の薬剤師は言う。
「市販の風邪薬には、さまざまな症状に広く対応する総合感冒薬のほか、咳、のどの痛み、発熱といった特定の症状に効くように有効成分を配合した商品がある。購入の際は薬剤師に相談したほうがいいでしょう」
同社の昨年の調査では、「1年間に風邪をひいたことがある人」は47.6%にのぼり、このうち「2回以上ひいた人」が20.7%いた。
風邪は、鼻からのどまでの「上気道」と呼ばれる部分にウイルスが感染して起こる。ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなど、原因となるウイルスは200種類以上もある。その種類によって症状も対策も異なる。風邪薬には、症状を抑えてもウイルスをたたく作用はない。
病院に行けば万全かというと、そうでもない。芝大門いまづクリニック(東京都港区)の今津嘉宏医師はこう話す。