
キース・ジャレットが真のリーダーとして牛耳る快感
Charles Lloyd & Keith Jarrett / Legendary Performance 1966 (Cool Jazz)
マイルスの新音源到着を待っているあいだの「マイルス関連ミュージシャン新音源紹介シリーズ」というわけですが、今回はチャールス・ロイドといきましょう。ちなみにロイド盤は2枚ひかえています。とはいえマイルスの新音源はまもなく登場する予定、したがって次回はどちらに転ぶか、現時点ではワタクシにもわかりません。ともあれ今週はロイドの1966年、ヨーロッパ3か所におけるライヴを収録した『レジェンダリー・パフォーマンス1966』をご紹介したいと思います。
さっきから「ロイド、ロイド」と連発していますが、いうまでもなく主役はキース・ジャレットです。もちろん、こういう言い方はロイドの熱心なファンにとっては不快かつ「かんちがい」もいいところでしょうが、聴けばわかるとおり、ここは誰がなんといってもキースが主役です。キースが全体の方向性を決め(その演奏でもって)、さらに演奏を加速させ、セシル・マクビー(ベース)、ジャック・デジョネット(ドラムス)を引っ張り、新しい次元へと導いていく。その「引っ張られ組」にちゃんとロイドも乗っかり、可もなく不可もないソロをとっていくという、これがこのグループの実態ではあります。マイルスがキースとデジョネットの2人だけに注目したのも当然というべきでしょう。そう、このグループは、70年代マイルス・バンドの太い伏線であり、この延長上に『ライヴ・イヴィル』や『セラー・ドア・セッションズ』があるのです。
マイルス者ならぬキース者には、ピアノ・ソロによる《ライザ》がおもしろいかもしれません。ラグタイムで一気呵成に弾き切り、それはそれは鮮やか。そこから一転して、あの名盤『ドリーム・ウィーヴァー』の「秋」にちなんだ組曲に突入そして《枯葉》を迎えるという展開は、じつによくできています。キースのソロは、先のラグタイムからセシル・テイラーばりのフリーな領域まで自由に出たり入ったりをくり返し、さらにはセシル・マクビーとジャック・デジョネットを道連れに疾走していく。そこにロイドが遠慮がちに参画するという「明らかにバランスを欠いたバランス」が屈折した快感を呼び、気がついたときには「おお、これぞキース」と叫びたくなっているわけです。
ノルウェイ、フランス、デンマークでのライヴ。キース・ジャレットのマニアと研究家そして欲張りなマイルス者にとっては重要なアイテム。機会があればぜひ聴いてください。それではまた来週。
【収録曲一覧】
1 Introduction
2 Joan
3 Song Of Her
4 Zoltan
5 Is It Really The Same
6 Tagore
7 Love Song Baby
8 Love Ship
9 Forest Flower
10 Manhattan Tripper
11 Little Anahid's Day
12 Liza (Piano Solo)
13 Autumn Sequence (Autumn Prelude-Autumn Leaves-Autumn Echo)
14 Forest Flower
15 Love Ship
16 Manhattan Tripper
17 Island Blues
(2 cd)
Charles Lloyd (ts, fl) Keith Jarrett (p, ss) Ron McClure (b) Jack DeJohnette (ds)
1966/5/7 (Norway)---7-12, 7/23 (France)---13-17, 10/30 (Denmark)---1-6