民間を使うと「セキュリティーに問題が出る」「自前の通信回線を失う」と言う防衛省職員もいますが、その考えは時代遅れです。セキュリティーについていえば、最新のセキュリティー技術に対応した民間の通信システムに防衛省独自で暗号化装置を設置すれば、最強のものをつくれます。むしろ、マイクロ回線だと中継局のアンテナが外部に出たままですから、盗聴の恐れもあります。

「自前回線論」も無意味です。全国の基地間などに張り巡らせている防衛情報通信基盤(DII)の大半は部外回線に依存しており、マイクロ回線自体も幹線と基地等をつなぐネットワークでは部外回線に依存しているので、自己完結性などすでに失われている。なぜ、防衛省の現役職員は現状を変えられないのか。理由の一つは再就職先への配慮だと思います。OB職員の多くが、自衛隊に通信機器を納入する大手電機メーカーに再就職している。たとえば、マイクロ回線にかかわる機器は主に日本電気(NEC)が納入していますが、NECは5年間で15人も再就職している。再就職を引き受ける人数に影響が出ることを心配しているのだと思います。私は通信コンサルタントとして防衛省の後輩職員に「マイクロ回線をやめるべき」と忠告してきました。彼らも内心はわかっていますが、「すぐに変えられない」と言うのです。私自身は防衛省への批判のためではなく、国を思って申し上げていますが、総論賛成・各論反対で、なかなか前に進みません。

週刊朝日  2015年10月2日号

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