脆弱な基盤の年金生活者は、病気や介護施設とのトラブルなどがきっかけで中流から下流に転落するという。「老後破綻」し、巷に漂流する下流老人は600万人以上いるとされる。そんな下流老人を狙う「貧困ビジネス」がはびこっている。
「貧困ビジネス」のターゲットは、生活保護受給者ばかりではない。国民年金を受給しながら働き続ける自営業者、派遣社員たちも労働搾取としての「貧困ビジネス」の犠牲になっているというのだ。
厚生労働省によれば、60歳以上で国民年金だけを受給している人の数は13年度末の時点で、1023万人。そのほとんどが生活保護受給者よりも、受給額が少ないのが現実だという。
貯蓄などの資産がなければ、高齢であっても働かざるを得ない。
東京・山谷で日雇い労働者として30年間働いていた経験をもとに、困っている人から相談を受けている「被ばく労働を考えるネットワーク」事務局委員の中村光男氏はこう話す。
「全国的に駅前商店街がシャッター街になって、商店が次々につぶれましたよね。自営業者たちはみんな国民年金で大変ですよ。昔みたいに年をとっても商店を経営して、現金収入があるという時代ではない。商店ではなくても、大工さんや鳶職は賃金がいいんですけど、仕事を辞めると国民年金でガタッと収入が減ります」
国民年金受給者で困窮している人たちを対象とした「労働市場」もできているという。街角に置いてある無料の求人情報誌やインターネットで、労働者を募る。
「短時間労働で、時給千円くらいで、どこそこのビルの清掃とか、道路工事のガードマンの仕事とかトイレ掃除とか、そういう求人がたくさん載っているでしょう。そういう仕事をしているのは国民年金受給者が多いですよ。年金の4万円とか5万とかじゃ食っていけない。その補てんのために少しでも収入を得ようと必死ですよ」(中村氏)
さらに、困窮した高齢者が集まるのが、比較的高給な「除染ビジネス」だ。