「昔から、ひとりぼっちは嫌なのに、自分勝手な孤独が好きで、しょっちゅう自分の中にある祠(ほこら)に閉じこもっては、“このままじゃダメだ”なんて自問自答していたんです。でも、人間、生まれたときは一人で、死ぬときも一人。人生に、究極の孤独が二つもあるのに、その間を生きるときに、“孤独だ”なんて嘆くのはナンセンスじゃないか。時田を演じて、そのことに気づけましたね。この年になって、青臭い役を演じることで、久々に祠に入ったのかもしれない。今はすっかりイケイケですよ。次の祠シンドロームが来るまでは、この感じで行けるんじゃないかな(笑)」

 65歳にして、モノの見方に変化が訪れているのは、映画はもちろん、孫の存在も大きいのだとか。

「孫のことは、俺、“神様”だと思うことにしたの。口はきけないけれど、我々の知らない世界を、あの純粋な目で見ているわけで、すぐ“ありがとう”と言いたくなっちゃう。孫神社だね(笑)。孫バカしてると、『似合わない』なんて言われるけど、可愛いんだからしょうがない」

 まだ自問自答していることもある。

「それは、“俺って何で売れたんだろう”って(苦笑)。たまたまなのか。みんなそうなのか。緒形拳さんには訊きそびれちゃったから、今度、津川雅彦さんに訊いてみよう(笑)」

週刊朝日 2015年9月11日号

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