がん医療の進歩は目覚ましく、患者の生存率は確実に上昇している。喜ばしい医療の成果の一方で、「長期化・高額化する医療費の負担に疲弊する人が増えている」という声も。また、仕事が続けられないことによる収入減で、「下流老人」に転落する可能性もある。そこでがん治療のお金について基本的な3つのポイントをQ&Aで答える。
■Q1:がんで仕事が続けられない。収入はどうなる?
A:会社員や公務員は傷病手当金の支給が受けられる
がんなどの病気やけがで働けなくなった場合、1日につき標準報酬日額の3分の2が「傷病手当金」として支給される。標準報酬日額とは、社会保険の保険料を決めるときに使う標準報酬月額を30で割ったもの。日額が1万5千円であれば、傷病手当金は1日1万円になる。ただ、欠勤の期間中も給与が支払われる場合には支給されない。給与が手当金より少ないときには、その差額が支給される。
支給開始は、欠勤が連続して3日間続いたあと、4日目から。支給期間は、ひとつの疾患につき最高で1年6カ月間だ。間に職場復帰の時期があって手当を受給しなくても、1年6カ月以上延ばすことはできない。
入院中でなくても使えるので、手術や入院には有給休暇を利用し、その後外来で化学療法がスタートしてから傷病手当金を使うという方法もある。
やむをえず退職した場合には、雇用保険の基本手当(いわゆる「失業手当」)を受給することを検討しよう。受給期間は原則、離職した日の翌日から1年間。「労働の意思と能力がある人」が支給対象なので、「病気でまったく働けない」という場合には受給できないが、1週間に数日や1日数時間でも働く意思があれば受給可能だ。
■Q2:がんでも障害年金をもらえる?
A:がんで働けなくなったということでも年金の申請は可能
障害年金は、病気やけがが原因で生活や仕事に支障をきたしたとき、生活を保障するために支給される公的制度だ。がんが原因でも同様で、65歳未満であれば収入の有無にかかわらず障害年金を受給できる可能性がある。
目に見える機能障害がある場合はもちろん、「治療による倦怠感やしびれなどで以前のように仕事や家事ができなくなった」というケースでも、初めて医師の診察を受けた日から1年6カ月経過しても変化がなければ対象になる。
■Q3:お金のことが不安…だれに相談する?
A:まずは近くのがん相談支援センターで制度の確認を
近くの「がん相談支援センター」で相談できる。全国のがん診療連携拠点病院などに配置されている相談窓口で、がん医療の知識が豊富な看護師やソーシャルワーカー(社会福祉士)が個別の不安や悩みに応じてくれる。相談は直接でも電話でも可能で、患者本人、家族、地域に住む人も利用できる。ここで自分が利用できる制度、社会復帰の見通しなどについて相談したうえで、役所などで個別に相談するといいだろう。
※週刊朝日 2015年9月11日号