
「過疎」や「限界集落」といわれる農山村に、子育て世代の移住者が増えているという。
農村政策に詳しい小田切徳美・明治大学教授(農業経済学)は、[1]都市から地方へ、[2]両親いずれかの出身地に、[3]親世代を1世代飛ばして、移住する孫たちの動きを「孫ターン」と分類している。Uターンでも、Iターンでもない動きだ。
広島市から車で1時間半、山に囲まれた島根県邑南(おおなん)町では、孫ターンした人がいる。
町内に住む中村亜沙美さん(32)にとって、92歳の中村繁実さんは父方の祖父だ。移住後に「帰ってきたんじゃね」とすぐに地元民に受け入れられた孫ターン者だ。
「じいちゃーん」
繁実さんが精米の手を止めて見上げると、納屋の窓からひょっこりと亜沙美さんの5歳になる子どもの顔が飛び出す。繁実さんが幸せを感じるひとときだ。
「ひ孫と過ごして成長を見るのが生きがいでね。一緒に晩ご飯を食べていると心があったかくなる。亜沙美ちゃんのおかげだよ」