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 所得、学歴の低さで不健康になるのが「健康格差」だ。低所得の下流老人は上流老人に比べ、死亡率は3倍、うつ状態のリスクは5倍に跳ね上がるという。さらに格差を感じることで上流老人でさえ不健康になるという。

 実は1980年代中盤以降、日本人の所得格差は広がっており、経済協力開発機構(OECD)加盟の先進国のうち高いレベルにある。日本人の約16%が貧困状態にあると言われ、なかでも66歳以上の下流老人は約19%にのぼる。では、下流老人のほうが不健康になりやすい理由は何だろうか。

「社会階層と健康」を調べた東京大学などの研究グループは、所得や学歴が健康に影響するメカニズムを提案している。

 まず、そもそも「お金がない」ことが、直接健康に影響する。食事やサービスを十分に受けられなかったり、医療機関の受診をためらったりするからだ。

 1万5千人の高齢者を対象とした調査では、過去1年間に医療機関の受診を控えたと回答した人は、高所得層では8.1%だったのに対し、等価所得が年160万円未満の下流老人では12%だった。

 貧困問題に詳しいジャーナリストのみわよしこさんはこう言う。

「生活保護を受けてはじめて、持病の治療を開始した人が数多くいます。それまでは、たとえば虫歯で激痛があっても、貧困のために医療機関を受診できなかったのです」

 だが、お金の問題だけでは解決できないという。みわさんは続ける。

「貧困状態にあった人が生活保護を受けるなどして一定の生活ができるようになっても、それで解決するわけではなく、しばしば、お金ではどうにもならない問題が表面化します」

 所得や学歴が低いことは、さまざまな心理的なストレスをもたらす。

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